ワークショップを開催しました
「宮沢賢治のイーハトーブ花巻レストラン・ごちそう案内所」
2019年、宮沢賢治さんのお誕生日8月27日から、宮沢賢治童話村のライトアップ最終日の11月10日まで開催した「宮沢賢治のイーハトーブ花巻レストラン」(主催:花巻市)。賢治童話をモチーフに、花巻市内8店舗それぞれの料理人が腕を振るった期間限定メニューで、花巻の食材の豊かさ、素晴らしさをお伝えし味わっていただく催しでした。
この催しに私はメニュー監修ということで関わらせていただき、そして9月23日に開催した関連イベント「宮沢賢治のイーハトーブ花巻レストラン・ごちそう案内所」では、賢治作品と花巻の農畜産物の「ごちそう案内人」をさせていただきました(雨のため、会場が宮沢賢治童話村から市立博物館会議室に変更になりました)。
当日は、まきまき花巻に掲載の「宮沢賢治の花巻レストラン」の取材先だった花巻黒ぶだう牛の生産者の方や、「宮沢賢治のイーハトーブ花巻レストラン」で童話メニュー提供の料理人の方もお越しいただき、おかげさまで「賢治童話と花巻の農と食の豊さや楽しさを再発見!」な会になりました。
ご参加いただいたみなさまありがとうございました!
このワークショップでは参加のみなさんにシェフになっていただき、イーハトーブの架空のスープを作りました。
「え~っ? 会議室で調理実習やったの?」
「いえいえ違います。でもそうなんです(笑)」
それでは当日のご報告として、イーハトーブのスープ作りをご紹介させていただきます。よろしかったらあなたも一緒に作ってみてください♪
◆それではスープを作りましょう
「宮沢賢治のイーハトーブ花巻レストラン・ごちそう案内所」。ここでは参加者のお一人おひとりが「シェフ」です。つまり本日は「宮沢賢治の・・・」ではなくて、それぞれの人の「イーハトーブ花巻レストラン」。だから、配布したスープ作りを書いていくレジメ「レシピノート」の表紙には、お名前を書いていたけるようにしました。賢治さんとのコラボな気分にもなっていただけたかな?
今回のお料理に必要な「調理道具」は鉛筆。そして「想像力」。たったこれだけです。包丁もまな板もいりません。机の上には新聞で作った「お鍋」をご用意しました(笑)。
「材料は?」。
「はい。屋台にたっぷりご用意しています」
◆まずは材料さがしから
それではスープを作る材料をさがしましょう。
「スープの材料」「素(ベース・だし)」「調味料(味付け)」になるものを「花巻の農畜産物」「花巻の風景」「賢治童話のことばやタイトル」から見つけます。
さがし方には次のようなお約束がございます。「分量」はそれぞれ「お好み」で結構です。
1)スープの「材料」=「花巻の農畜産物」から
2)スープの素(ベース・だし)=「花巻の風景」から
3)調味料(味付け)=「賢治童話のことばやタイトル」から
ワークショップ会場では、「材料さがしの材料」に「花巻の農畜産物の説明」と花巻のごちそうを並べた「屋台」をご用意しました。
説明の時間には、こんな4択クイズもやりました。おわかりになりますか?
Q1.花巻の農産物とは「違う」ものがこの中に1つあります。どれでしょう?
1)トマト 2)きゅうり 3)リンドウ 4)バナナ
Q2.宮沢賢治の童話「銀河鉄道の夜」で銀河鉄道沿線で作っている農産物は、次の4つのうちのどれでしょう。
1)菊芋 2)リンゴ 3)ピーマン 4)ブドウ
・・・クイズの答えは、この記事の最後をご覧くださいね。
屋台には「花巻の農畜産物」「花巻の風景」「賢治童話のことばやタイトル」をそろえました。ちなみにこの屋台は「いわてヤタイ」という岩手県産材でできた組み立て式の簡易屋台です。つまり屋台まるっと全部が岩手・花巻の「ごちそう案内所」!
これを読んでいただいているあなたには、屋台の代わりに、まきまき花巻に掲載のエッセイ「宮沢賢治の花巻レストラン」1~5をお届けします。その中から「スープの材料」を探してみてください。クイズのヒントも5つエッセイのどこかに出てきますよ。
〇まきまき花巻「宮沢賢治の花巻レストラン」
実際は「花巻のごちそう」を伝えるには、屋台やエッセイだけでは全然足りません。花巻には豊富な農畜産物と、農畜産物が作る美しい風景が広がっていて、作る人食べる人が交流し、すぐそばにおいしい食卓があります。そしてそんな日常の農と食の風景の中に賢治さんの作品世界が広がっているのが花巻です。花巻だからこそ、のおいしいものがいっぱいあるんですよ。
※「いわてヤタイ」についてはこちらをご覧ください(岩手県のHP)
◆いろいろあります「イーハトーブのおいしいもの」
ワークショップでは、まず参加者のみなさんに花巻の農産物のおはなしや屋台の写真や賢治童話から、ランダムに「いいなあ」と思われる言葉や写真をメモしていただきました。お料理の「下ごしらえ」です。集まったものを一部ですがご紹介します。
・花巻黒ぶだう牛 リンゴ ピーマン お米 雑穀 白金豚 洋梨 ブドウ トマト リンドウ 花巻ブルーの竜胆(リンドウ) 菊芋 枝豆・・・
・リンゴ畑 葛丸川 イギリス海岸 下の畑 東和の田んぼ・・・
・すきっとおったほんとうのたべもの 銀河鉄道の夜 宮沢賢治さん 鹿踊りのはじまり すきとおった 山男 アセチレンの光 朝の光 あさつゆ ポッシャリポッシャリツイツイトントン 秋の風 イーハトーブの大きな森 氷砂糖 桃色の日光 風景でつくるスープ ラムネ瓶の月光 注文の多い料理店 かしはばやしの夜 春と修羅 やまなし トプン カプカプ 泡がつぶつぶ・・・
次に集めた中から、「材料」「素(ベース・だし)」「調味料」を決めていきます。それぞれどんな色、味、香りがするのだろう、どうやって調理しよう・・・イメージをふくらませてレシピノートへ書いていきます。材料が揃ったら、スープの名前をつけましょう。値段もできたらお願いします。仕上げにスープの自慢ポイントをまとめて出来上がり。
知っているようで、知らないような。食べたことがないようで、あるような。そんな「賢治童話」×「花巻の豊かな農畜産物」が織りなすおいしいスープが出来上がりました。
◆感激のできあがり!
ワークショップでは10皿のスープが出来上がりました。どれもとっておきのおいしさです。それぞれのスープに、屋台でご案内した写真を添えて順不同でご紹介します。
さあさあ、お召し上がりください♪
・・・でも、その前にひとつ注文がございます。
「想像力」というスプーンをご用意ください。そして一皿ひとさらじっくり味わってください。
スープの名前 | ペムペルとネリにささげる ルビーの絵の具皿スープ |
材料 | トマト バジル |
スープの素 | 下の畑 |
調味料 | 黄金 銀 にじ 太陽 月 |
★ルビー色のスープ。飲むと心が穏やに温かくなります。 |
スープの名前 | どこまでも一緒に行ける銀河鉄道スープ |
材料 |
白金豚のソーセージ ひえ トマト オクラ 玉ねぎ 豆 エーデルワイン(赤) |
スープの素 | 釜石線から見える田園風景 |
調味料 |
「銀河ステーション 銀河ステーション」と云う声 |
お値段 |
「どこまでも行ける切符」があれば無料で提供します |
★夜を思わせる深い赤色のスープ。白金豚のうまみたっぷりのトマト味。どこまでもいつまでもかいでいたいおいしそうな香り。ソーセージとひえ、豆によりボリューム感があるごちそうスープです。ジョバンニも元気になるに違いない。 花巻の農と食でいいところは、安心安全な上、種類が豊富なところ。 賢治童話でいいなあと思うところは、想像力が果てしないところ。表現が独創的なところ。 |
スープの名前 | プリオシン海岸のスープ(冷製) |
材料 |
リンドウ リンゴ 雑穀 |
スープの素 | イギリス海岸 |
調味料 |
牛乳 クルミの化石 |
お値段 |
921円 |
★乳の流れたあとと言われた銀河の色のスープ。ほんのり甘い。大切な人を思いながら飲むと味に深みが増します |
スープの名前 | すすぎの底の日暮れスープ |
材料 | トマト チーズ なす 菊芋 花巻黒ぶだう牛 |
スープの素 | イギリス海岸のほとり |
調味料 |
すきとおった秋の風 銀のすすきの波 西のぎらぎらのちぢれた雲のあいだからの夕陽 |
★すみれ色のスープ。トマト味。 |
スープの名前 | 大きな森のトロトロチーズスープ |
材料 |
花巻黒ぶだう牛 チーズ トマト |
スープの素 |
イーハトーブの大きな森 鹿踊り 東和の田んぼ |
調味料 |
トパァズ、サファイヤ、ダイアモンド 鹿踊りのわくわく感 |
★あさつゆ色のスープ。トマトと花巻黒ぶだう牛、チーズ味。牛肉の香り。花巻黒ぶだう牛とチーズのコンビネーションが自慢です。 |
スープの名前 | 雪の朝のリンゴのスープ 花巻黒ぶだう牛と |
材料 |
リンゴ 花巻黒ぶだう牛 |
スープの素 |
霜でぴかぴかしたリンゴ畑 |
調味料 |
とてもきれいなうぐいすみたいないい声 すきとおった風。 |
★リンゴのスープ。これで完成でいいかと山に聞く。山が「いいぞう」と答えたら完成。 |
スープの名前 | 賢治先生のスープ |
材料 |
洋梨 お米 花巻ブルーの竜胆(リンドウ) |
スープの素 |
下ノ畑ニ居リマス |
調味料 |
気のいい火山弾 |
お値段 |
1980円 |
★洋梨色のスープ。うす塩味。甘い香り。気のいい火山弾は(きっと)塩味です。賢治童話でいいなあと思うところは、色んな分野から入れるところ。私は詩作から入りました |
スープの名前 | 永遠のグリーン |
材料 | ネギ ホウレン草 白金豚 ミニトマト |
スープの素 | 森林のすがすがしいところ |
調味料 |
なめとこ山の熊 虔十公園林 |
とうめいなスープ。葉っぱの味。豚肉の香り |
スープの名前 | 銀河鉄道の晩餐会 |
材料 |
花巻黒ぶだう牛 ピーマン ミニトマト…花巻の農畜産物すべてを使用 |
スープの素 |
「鹿踊りのはじまり」の舞台。野原のまんなかのめっけもん |
調味料 |
銀河のお祭り |
★うすいワイン色のスープ。味わい深いうまみたっぷり。深い秋の風の香り。 |
スープの名前 | やまなしの澄んだスープ |
材料 | 枝豆 米 黒ぶだう リンドウを添える |
スープの素 | 葛丸川 |
調味料 |
やまなしのトブン |
「やまなし」のカプカプ、光のつぶつぶが味わえる。 |
◆イーハトーブのスープが語るもの
今回の架空のスープ作り。これは単なる言葉遊びではありません。
花巻を訪れた方、花巻市民の方、それぞれ立場の異なる視点で、花巻の農と食の風景と賢治世界から「いいなあ」と選んだものです。それを一人ひとりの「想像力」で「味」「味わい」を生み出し、作り出したスープは、それぞれの人の「ごちそう案内所」にもなっているのです。
このスープ作りを通して、イーハトーブの「材料」「調味料」の豊かさと多様性を再発見。そこに人の想像力があわさるとますます豊かになるなあと私は感じたのですが、みなさんはいかがでしょうか。
そしてこの豊かな感じは、花巻という地域の農業や、農畜産物の豊かさ、食の魅力・・・「花巻だからこそ」の魅力です。
◆花巻だからこそ
現在の花巻の農や食の世界で育まれているもの、そして花巻をふるさとにもつ宮沢賢治さんが紡いだ物語、それぞれに「花巻だからこそ」の「味」「味わい」があります。そしてその「だからこそ」には、時代を超えて賢治さんもふくめた花巻で農と食に関わる人たちの想いも込められています。「賢治童話」と「花巻の豊かな農畜産物」が出会った時、違和感や突飛なものにはならず、むしろ心地のいいもの、明るいもの、ワクワクするものを生み出す力になっていると感じるのはそんな想いが重なるからだと感じています。
「花巻だからこそ」たちが生み出す心地よい化学変化、「賢治童話」×「花巻の豊かな農畜産物」のコラボの様子は、まきまき花巻に掲載のエッセイ「宮沢賢治の花巻レストラン」や、花巻市内で2019年に開催した「宮沢賢治のイーハトーブ花巻レストラン」でも紹介しています。
花巻の農の風景の中では、お米・雑穀・野菜・くだもの・畜産・酪農・お花・・・さまざまな農畜産物が育てられています。そしてそんな花巻をふるさとにもつ宮沢賢治の作品世界や食のエピソードからは、花巻のしゃれたエッセンスと、ゆるゆるした明るい時間がながれています。これからも賢治さんと一緒に花巻の農業の魅力を楽しみましょう!
※「宮沢賢治のイーハトーブ花巻レストラン」特別メニューの食レポは、まきまき花巻にアップしています。
〇まきまき花巻「宮沢賢治のイーハトーブ花巻レストラン」食べ歩きレポート(前編)
〇まきまき花巻「宮沢賢治のイーハトーブ花巻レストラン」食べ歩きレポート(後編)
◇花巻市公式ホームページ
◇「宮沢賢治のイーハトーブ花巻レストラン」公式facebookでは最新情報などおしらせしています
2020年2月7日~13日 東京丸の内での開催情報はこちら
関連トークイベントを2月8日に開催!こちら
※クイズの答え Q1.は4)バナナ Q2.は2)リンゴ
Q2の1~4はすべて花巻で作られている農産物です。