花巻で育ったわけではありませんが、この土地出身の母に連れられて、子どもの頃から祖父の家に遊びに来ていました。
タラの芽の天ぷらやコゴミのおひたしなどの山菜、叔父がモリで突いて捕まえた川魚は串にさして庭で焼いて皆で食べました。極めつきは天然のウナギです。子どもだったので、ウナギそのものよりも甘辛いタレでご飯を食べるのが楽しみでしたが、今思えばなんとも贅沢な時間でした。
そんな記憶があるからでしょうか。花巻の食材には、どこか懐かしさを感じます。大人になった今も、美味しいものを探しに訪れる楽しみが続いています。
香茸(こうたけ)の存在を知ったのは、2年ほど前のことでした。叔父から「真っ黒で香りが良いキノコ」と聞き、道の駅へ行くたびに探してみたものの、その年は巡り会えませんでした。
昨年の秋、「今年もダメかな」とあきらめかけた頃、従妹が大迫(おおはさま)に出かけた際に買ってきて、柄の部分に糸を通し、暖炉のそばに吊るしておいてくれたのです。香茸は干した方が香りが良くなるそうです。

キノコの上側はブツブツが付いている。

見た目が獣の皮革に似ていることから「革(カワ)茸」とも言うそうです。
調べてみると、香茸は炊き込みご飯が定番で、お祝い事やお正月に食べる地域もあるようです。せっかく手に入れた貴重な香茸。失敗はできません。お正月に合わせて、準備を進めることにしました。
まずは香茸について知ろうと、ネット検索やキノコの書籍で情報を集めました。中でも、キノコを販売している「ホクト」の「きのこアルバム」が印象的でした。香茸の香りはマムシも好むそうで、「見つけたらまず周囲をつついてマムシがいないか確認すること」という豆知識は、いつか山で見つけたら…という空想を誘います。
(掲載されているキノコがデザインされた、パソコンの壁紙にできる画像もダウンロードできます。キノコに興味がある方はぜひご覧ください、楽しいです。)
レシピを探す中で、まず迷ったのが「もち米にするか、白米にするか」。岩手県のサイトでは白米4合にもち米1合の配合が紹介されていました。そこで予行演習として、シメジを入れたおこわを作ってみたところ、もち米は美味しいものの、香茸の存在感と競ってしまう気がしました。
迷った末、香茸の香りと食感を主役にするため、白米のみで作る事にしました。具材は香茸の個性を邪魔しないよう、人参とタケノコだけに絞りました。

乾燥香茸は34グラム。いしづき部分をとり、お米3合に対して全部使いました。
年が明け、いよいよ本番です。香茸は前日から水に浸して戻しました。驚くほど真っ黒な戻し汁に一瞬たじろぎましたが、すでに香ばしい香りが漂っています。一説には「松茸より良い香り」とも言われているそうです。

真っ黒な水に革のような見かけ・・・。
香茸、人参、タケノコの異なる食感を同じように味わえるよう、あえて大きさを揃えて切りました。地元のものには地元の調味料が合うと思っているので、醤油は「佐々長醸造(株)」の「早池峰しょうゆ」を使いました。酒とみりんを合わせ、具材を軽く煮ます。
冷めて味が染みたところで煮汁と分け、炊飯器にといだお米と煮汁を入れ、指定の水位まで香茸を戻した黒い水を加えました。戻し汁を使うかどうかはレシピによって違いましたが、迷わず使う方を選びました。あとは炊飯器に任せるだけです。

かなり具材タップリの炊き込みご飯になりました。
炊き上がりを待つ間、台所に広がる香茸の香りの強さに驚きました。水で戻した時よりも、香ばしくふくよかです。炊きあがり、蓋を開けて具材を混ぜ込み、さらに5分ほど蒸らしました。
香茸を調達してくれた従妹にも食べてもらおうと、香茸ご飯を車に積んで叔父の家へ向かいました。蓋をしているのに、車中が香りでいっぱいです。知らない人が乗り込んだら、本当に驚くでしょう。
いよいよ実食です。香茸の香ばしさと醤油の香りが白米に染み込み、奥行きのある味わいになりました。しっかりとした食感も心地よく、人参とタケノコだけにしたことで、それぞれの違いがしっかり感じられます。手間をかけた分だけ、香りも味も忘れられない一椀になりました。もちろん、お代わりしました。

焚きあがり
タップリ香茸が入ったご飯を初めて食べて大満足でしたが、花巻に遊びに来る友人達にも是非食べてもらいたい。きっと初めてのはず。その後も香茸が無いか探していたところ、土沢の産直「あおぞら」(岩手県花巻市東和町安俵6-94)にありました。ちなみに、乾燥した物40グラムで5,000円でした。いつでも売っているわけでは無いので、秋だけのようです。
香茸のように、花巻にはまだ知らない食材がたくさんあるはず。ゆっくり探していくのが楽しみです。
※土沢の産直「おあぞら」にて、いつでも香茸が販売されているわけではありません。また、天然の香茸は、採れてから3日しかもたないため、出会えたらラッキー!なお、天然の香茸には、虫がついていることもあるそうです。調理する時はお気をつけください。



