まきまき花巻体験したい岩手特有のことば、花巻特有のことば
岩手特有のことば、花巻特有のことば
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 方言ではないものの、当地独自の言い回しや単語などの言葉がある。言語地理学的に言うと、これらもまた生活の中から派生した言い回しや単語なので、学問上は方言と同じような扱いとなるだろう。厳密には方言ではないので他地域の方に意味が通じないということはないのだが、その言葉を聞いて頭の中でイメージするものは全く違ったものになることが多く(あるいは古い言い方過ぎて理解できない年代もある)、会話が成り立たない例をよく聞く。方言ほど「方言として理解される」言葉ではないため、話す方は全国的には通じない表現であることに気づかないことが多いし、聞く側も戸惑うことが多くなる。いくつか挙げてみよう

 

  • 中ズック、外ズック

 いわゆる「内履き」や「運動靴」のこと、「ズック」とは帆布のような木綿や麻の目の荒い織物だが、かつてはそれで作られた靴が学校での内履きや運動靴だったことから、今でも内履きは「中ズック」、運動靴は「外ズック」と言われる。昔の高校生たちが肩からかけて歩いた布製学生鞄も「ズックの鞄」という言い方をした。

 

  • 下駄箱

 もちろん今では下駄で通学する生徒・学生はいないが、今も学校の昇降口にある靴箱は「下駄箱」と呼ばれることがある。昭和20年代後半ごろまでは、靴が高価で手に入らず下駄で通学する生徒・学生がいた。

 

  • 狼煙(のろし)

 よくネイティブアメリカンの昔話に出てくる煙信号のことではない。例えば運動会が行われる朝、天気が良くて実施決定となった時、あるいはまつりやイベント時の開始合図や景気付けに上げられる、音と煙だけの花火のこと。これを狼煙というのは限られた地域だけだということをごく最近知った。

 

  • タバコ

 吸うタバコのことももちろん「タバコ」と言うが、ここでは作業の小休止のこと。「そろそろタバコにするべ」という言い方をする。別に必ずタバコを吸わなければならないということはない。同じような言い方に「こびる・こびり(小昼)」がある。

 

  • 車で歩く

 車を担いで歩くわけではない。車に乗って移動することを「走る」ではなく「歩く」という。この場合は「歩く」と言う発音ではなく「ありぐ」と訛ることことが多い。

 

  • かまど

 もちろん煮炊きする「竃」のことだが、これが「家」の象徴として使われる。分家することを「かまどを分ける(分家そのものを〇〇家のかまどと言う)」、破産してしまうことを「かまど返し(けぇし)」と言う。

 

  • 脛巾脱ぎ(はばきぬぎ)

 脛巾(はばき)とは昔の脚絆。脛から足首までを覆う布のこと。戦時中のゲートルもその一種といえる。昔は旅から帰ると身につけていた脛巾を脱ぐことになるのだが、脛巾を脱ぐと同時に無事の帰還を祝って飲み会などが行われるのが全国的に普通だった。今は脛巾は身につけないが、旅後の飲み会そのものを「脛巾脱ぎ」と言うようになった。

 

  • かさぞろえ、かさこし

 花巻においては祭りが始まる時の儀式を「かさぞろえ」、終わった後の打ち上げのことを「かさこし」言う。どうやら後者の語源は「笠こわし」らしい。昔は神仏を拝みに遠出する時に「笠揃え」と言って一行の笠を用意し、帰ったら無事の帰還を祝ってかぶってきた笠を壊していたようだ。祭りは「祀り」。祭りに参加するとはイコール神仏への拝礼であるから、始まる前の「かさぞろえ」、終えた後に「かさこし」を行うのだろう。

 

  • 切り込み

 一般的にイカの塩辛のことを言うが、もしかしたら微妙にニュアンスが違うかもしれない。普通塩辛と言えばしょっぱい(塩辛い)ものだが、少なくとも私が認識している切り込みはそんなにしょっぱくない。身とヌタを和えたものを言うので、塩辛のような保存食ではないのかも知れない。しょっぱくないので、そのまま酒の肴として最適。

 

  • 病む

 一般的には病気になるという意味だが、「腹」を付け加えると「痛い」という意味になったりする。腹痛を「ハラ(腹)病み」と言うことが多いが、「頭病み」や「腰病み」という言い方はしない。

 

  • 鼻おと

 イビキのこと。「イビキ」のような固有名詞よりも「鼻音」の方がイメージしやすい。

私が書きました
北山 公路

出版プロデュース、企画・編集のフリーランス。
花巻に生まれ育ち、今も花巻在住。東京の出版社の仕事と地元の仕事半々を花巻でこなす。2017年春から「花巻まち散歩マガジン Machicoco」を創刊し、隔月発行継続中。