まきまき花巻味わいたい「宮沢賢治のイーハトーブ花巻レストラン(2019,花巻開催)」食べ歩きレポート(後編)
「宮沢賢治のイーハトーブ花巻レストラン(2019,花巻開催)」食べ歩きレポート(後編)
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 2019827日から1110日まで花巻市内開催の「宮沢賢治のイーハトーブ花巻レストラン」。8つのお店で花巻の農畜産物をつかった宮沢賢治の童話メニューが味わえます。花巻でないと味わえない期間限定の特別メニューです。

 賢治メニュー食べ歩きレポート後半をお届けします。引き続きお楽しみください。

〇前半をまだ読んでおられない方はこちらからどうぞ!

「宮沢賢治のイーハトーブ花巻レストラン」食べ歩きレポート(前編)

 

◆おいしい花巻の食と農をめぐる旅

 「宮沢賢治のイーハトーブ花巻レストラン」では、8つのお店で、9つの賢治童話をモチーフに、9つのメニューと3つのコース料理が生まれました。お店の名前と、「賢治童話」、花巻の使用食材は次の通りです。

 それぞれのお店のそれぞれの「花巻の食材」をながめるだけでも、花巻はおいしいものが豊富なこと、伝わりますよね!?

〇ホテル志戸平・ちょうちん酒場又三郎「やまなし」

 白金豚、トマト、ベビーリーフ、雑穀、ナス等

〇ファームプラス「セロ弾きのゴーシュ」

 米、白金豚、自家製野菜(トマト、ナス、ピーマン、インゲン、キュウリ、青南蛮)

〇イル・クォーレ「十力の金剛石」

 花巻の旬の野菜、果物、花巻黒ぶだう牛、ほろほろ鳥、早池峰三元豚

〇HAIKARA-YA「祭の晩」

 白金豚ソーセージ、雑穀、豆、卵、そのほか花巻の野菜

〇華胥の郷「鹿踊りのはじまり」

 栗、りんご、ほろほろ鳥、トマト、雑穀、きのこ

〇レストランポパイ「フランドン農学校の豚」「グスコーブドリの伝記」

 白金豚、白金豚のベーコン、トマト、ズッキーニ、大豆、雑穀、生レーズン

〇山小屋カフェkurakake 「銀河鉄道の夜」「セロ弾きのゴーシュ」

 自家栽培りんご、トマト、キャベツ、エディブルフラワー、たまご、雑穀、

〇山猫軒本店「どんぐりと山猫」

 米、白金豚、きのこ、味噌、牛乳

 

 レポートの前編では、ホテル志戸平・ちょうちん酒場又三郎、ファームプラス、イル・クオーレ、HAIKARA-YA4店のメニューをご紹介しました。

続く後半では、華胥の郷、レストランポパイ、山小屋カフェkurakake、山猫軒本店の4店の賢治メニューをご紹介させていただきます。

※但し、花巻の使用食材は、時期により変更されていることがありますのでご了承ください。

◆華胥の郷の「鹿踊るぎんがぎが秋の里山ランチコース」

 ランチコース、ディナーコースともにメニューになった「鹿踊りのはじまり」は、主人公の嘉十(かじゅう)と六匹の鹿たちがすすきの野原で出会うおはなしです。夕陽に向かって鹿たちが「ぎんがぎがの」と歌いめぐり、跳ね踊ります。

 コース料理という流れを生かし、物語のシーンが順番に、花巻の秋の里山のめぐみたっぷりのお料理であらわれます。

一皿ひとさらが「賢治さんが夕暮れの野原で風から聞いた物語」です。

【花巻食材】栗、りんご、ほろほろ鳥、トマト、雑穀、きのこ 

〇メニュー名「鹿踊るぎんがぎが秋の里山ランチコース」

<はじめの皿>「鹿踊りのはじまり」のはじまり 

花巻産 色とりどりの野菜のサラダ 猪肉のリエット添え

 

<スープ>「イーハトーブの空」

花巻石黒農場のほろほろ鳥のスープ

奥州水沢産 雉胸肉のクネルと雉卵プリンを浮かべて

 

<魚介の皿>「まぶしまんぶし 里山の秋」三陸魚介と花巻野菜のグリル

 

<ジビエ肉の皿>

「ぎんがぎが 山のめぐみ」

本州鹿のポワレと花巻産雑穀入りポテトのクリーム

手前味噌の赤ワインソース 秋の木の実添え

 

 <デザート>「黄金色(きんいろ)の秋の果実」

花巻産りんごとそば粉カスタード 南部小麦のタルトレット

 「花巻南温泉峡に2019年春オープンしたばかりのジビエ料理を扱うオーベルジュ」。それを聞いた私の頭の中は、賢治童話の中の明るい森や林の中の、木の葉のかさかさする様子でいっぱいになりました。

 実際ランチへ出かけた日、いつもの温泉行きのバス道からそれると、細い道の向こう、林の先に立派な門構えのお店が現れました。レストランは畳敷きで何やら心落ち着きます。そして壁には立派な鹿の飾りもの。和と洋が心地よくコラボした空間です。そしてお料理にもフレンチの調理や味付けの中に、和のテイストがバランスよく入っていました。ジビエという食材と花巻の旬の野菜、くだものが、どれも主役になってお皿の上で秋の森を作っていました。

 今回いただいたのはランチコースですが、「鹿踊るぎんがぎが秋の里山ディナーコース」もあります。こちらには「すきとおった秋の風」や「はんのきのお日さま」など物語の風景、そして花巻の豊かさを感じる風景がさらに美しく、そして楽しく彩られています。

※花巻の豊かさを感じる風景については、まきまき花巻

「宮沢賢治の花巻レストラン1https://makimaki-hanamaki.com/2031

「宮沢賢治の花巻レストラン3https://makimaki-hanamaki.com/2404

でも紹介しています。

「華胥の郷(かしょのさと)」

※童話メニュー2日前完全予約制(童話メニュー以外のご利用も予約が必要です)

電話0198-41-6565 花巻市湯口字佐野33-25

HP https://www.kasyonosato.jp/onsen

【ランチ】午前1130分から午後2

【ディナー】午後6時から9

定休日:火曜、水曜・席数24席・駐車場12台 

 

◆レストランポパイの「白金にたとえられたフランドンの豚」「ある日のグスコー家の食卓」

 レストランポパイは花巻のブランドポーク「白金豚」の直営店です。2つのメニューとも「幸福感」というキーワードが入っています。

 ポークソテーは「白金豚」由来にもなっている「フランドン農学校の豚」から。豚が大地の恵みを受けて上等な食肉を生み出す様子を「豚のからだはまあたとえば生きた一つの触媒だ。白金と同じことなのだ。」と生徒が感心するシーンがあります。それを聞いた豚は、幸福感を感じます。

 そして「グスコー家の食卓」のメニューは「グスコーブドリの伝記」で主人公ブドリが、両親と妹ネリと一緒に暮らしていたころ、幸せだったころの食卓風景に思いを馳せてつくったスープとパンです。白金豚のベーコンをはじめ、花巻の豆や雑穀など保存できる食材と、トマトなどの花巻の旬の野菜がたっぷりはいって、シンプルだけど滋味のある一家団欒の風景が浮かんでくるスープでした。

【花巻食材】白金豚、白金豚のベーコン、トマト、ズッキーニ、大豆、雑穀、生レーズン

 〇メニュー名「白金にたとえられたフランドンの豚」

~ 白金豚のポークソテー ~

〇メニュー名「ある日のグスコー家の食卓」

~ ブドリとネリもきっと大好き「グスコー家のトマトスープとぶどうパン」 ~

「レストランポパイ」

  • ※童話メニュー予約等は不要
  • 電話0198-23-4977・花巻市若葉町3−11−17
  • HP https://popeye.meat.co.jp/
  • 【営業時間】午前11時から午後930
  • 定休日:火曜・席数44席・駐車場11

 

◆山小屋カフェkurakakeの「銀河鉄道の夜、不思議な苹果」「ジョバンニのサンドイッチ」「ゴーシュの畑のパスタ」

 山小屋カフェkurakake店主の本宿さんは、りんごなどを作っている果樹農家です。それで本宿さんと私の間でメールを通して、賢治童話や賢治のエピソードにあるりんごについて、やりとりを何度かしました。本宿さんのメールの端々からは、りんごを作る人ならではの表現や感覚が伝わってきます。そんな本宿さんから私は「わーそうなんだ」と教わったり、気づかせてもらったこともたくさん。それでメニュー作りのお手伝いにしばし「熱く」なってしまいました。

【花巻食材】自家栽培りんご、トマト、キャベツ、エディブルフラワー、たまご、雑穀、

 〇メニュー名「銀河鉄道の夜、不思議な苹果(りんご)」

 「銀河鉄道の夜」から。銀河鉄道の車内で男の子が苹果をパイのように喰べました、というとても不思議なシーンを食感を変えて調理した1個のりんごをパイのように食べられるように工夫してあります。

 賢治の時代は大きな西洋のりんごのことを「苹果」と呼んでいました。現在の「林檎」です。

〇メニュー名「ジョバンニのサンドイッチ」

 「銀河鉄道の夜」で、主人公ジョバンニが「トマトで何かこしらえたもの」をパンと一緒に「むしゃむしゃ」と食べているシーン。花巻産のトマトを煮詰めたソースや卵で「むしゃむしゃ」とした食感にこだわったのは、物語で沈んだ気持ちのジョバンニが、「むしゃむしゃ」食べることで少し前向きになったように感じたからです。牛乳を取りに行ったジョバンニのために牛乳のカップも添えてあります。 

〇メニュー名「ゴーシュの畑のパスタ」

「セロ弾きのゴーシュ」の主人公ゴーシュが自宅の水車小屋の前でつくっている小さな畑をイメージして作ったパスタ。畑をザクザク耕すように、キャベツとトマトのお皿の上で耕しながら食べられます。花巻産のエディブルフラワー(食べられるお花)も「畑」の中で咲いています。

「銀河鉄道の夜」と「セロ弾きのゴーシュ」それぞれの物語をお腹いっぱい味わいました。中でも「銀河鉄道の夜、不思議な苹果」は、りんごっていろんな味や食感が楽しめるのだなあと、りんごの奥深さまで思いを馳せたくなるお料理でした。

 花巻は美しいりんご畑の風景にも出会える場所です。この不思議な苹果のかごをもって花巻のりんご畑にでかけてみたいな、そして銀河鉄道にも乗りたいなあ!そんな気持ちになりました。

※花巻のりんごのことは、まきまき花巻「宮沢賢治の花巻レストラン4」でも紹介しています。

https://makimaki-hanamaki.com/2715

◆「山小屋カフェkurakake

  • ※童話メニュー数量限定
  • 電話080-5049-7075・花巻市高松26-28
  • FB https://www.facebook.com/cafekurakake/
  • 【営業時間】午前11時から午後5
  • 定休日:月曜、火曜(その他不定休あり)・席数30席・駐車場20

◆山猫軒 本店の「“どんぐりと山猫”セット」

 宮沢賢治記念館前にある山猫軒は「注文の多い料理店」に登場する山猫軒をモチーフにしたお店です。けれどもちろん(?)物語のように私たちが食べられるのではなく、花巻の食材を生かしたおいしいメニューをいろいろ味うことのできるお店です。

 「“どんぐりと山猫”セット」は文字通り「どんぐりと山猫」の物語がお皿に乗っています。

 物語のの主人公、かねた一郎くんは、山猫から「めんどなさいばん」があるからきてくださいとはがきをもらいました。でかけた森の中では、いろんな形の黄金(きん)のどんぐりたちが、がやがやがやがや大騒ぎ。

【花巻食材】米、白金豚、きのこ、味噌、牛乳 

〇メニュー名「どんぐりと山猫」セット

 ~「どんぐり君のみそ焼きおにぎり」と「手づくりホワイトソースでつくるキノコの馬車

 黄金(きん)のどんぐりに見立てた特製みそ焼きおにぎりがお皿に並んでいます。花巻の雑穀入りで、海苔の香りもふわーっとします。

 どんぐりの足もとには森の土に見立てた白金豚のロース。黄いろのトマトで作ったソースで味付けされ、じわーっと旨味が拡がります。自家製ホワイトソースで煮こんだまろやか風味のキノコは、一郎君が乗って帰ったきのこの馬車です。オレンジ風味のプリンには・・・山猫がにゃあ!

◆「山猫軒 賢治記念館前(本店)」

  • ※童話メニュー数量限定・平日のみ
  • 電話0198-31-2231・花巻市矢沢3-161-33
  • HP https://www.yamanekoken.jp/
  • 【営業時間】午前10時から午後5時(ラストオーダー午後430分)
  • 定休日:1228日から11日・席数60席・駐車場30

 

「ごちそうさま」と「いただきます」のあいだには「ほっと一息」

 「宮沢賢治のイーハトーブ花巻レストラン」では8つの飲食のほか「宮沢賢治記念館 喫茶コーナー」と「喫茶 猫の事務所(宮沢賢治イーハトーブ館内)」で、賢治関連の農産加工品と取り扱っていただいています。

 賢治の世界に浸ったあと、賢治メニューでおなかいっぱいになったあとに、ほっとひと息の場所としてもお出かけになってみて下さいね。 

〇「宮沢賢治記念館 喫茶コーナー」

 〇「喫茶 猫の事務所(宮沢賢治イーハトーブ館内)」

 

◆宮沢賢治のイーハトーブ花巻レストラン

 8つのお店の花巻の農畜産物を豊富に使った賢治メニュー。いかがでしたか?

 花巻の野菜やくだもの、お肉たちが奏でる賢治作品とのグルメなコラボを、もっとたくさんの人に食べてもらいたいな、知ってもらいたいなあ・・・賢治ファン、花巻ファン、旅行が好き、読書が好き、食べることが好き、だけじゃないいろんなみなさまに、と願っています。

 レポートを読んで、それぞれのお店にお出かけいただけると幸いです。

 そして遠方で今回、出かけられない方には、花巻の豊かな農と食の様子がどうぞ届きますように…。

 ちなみに前編、後編、お店紹介の順番は、「花巻南温泉郷から宮沢賢治記念館まで、まち歩きでお店をたずねるのに近い順」です。ご参考まで!

 お読みいただきありがとうございました。

  • 開催期間:2019827日(火)から1110日(日)まで
  • 内  容:花巻市内の飲食店8店舗:岩手県花巻の農畜産物で作る宮沢賢治の童話世界の特別メニュー
  • 宮沢賢治関連施設2施設:賢治世界にこだわった花巻の農産加工品などの物販

★公式FBでは最新情報などおしらせしています。

https://www.facebook.com/kenji.restaurant/

★チラシはこちらからダウンロードできます

https://www.city.hanamaki.iwate.jp/_res/projects/default_project/_page_/001/009/919/chirashi.pdf

8店舗の全メニューはこちら花巻市HPからご覧いただけます。

https://www.city.hanamaki.iwate.jp/_res/projects/default_project/_page_/001/009/919/menuall0823.pdf

※なお、童話メニューの提供については、数量限定や予約が必要なお店もありますので、事前に各お店へご確認ください。

 

※賢治作品の引用は『宮沢賢治全集 1~10』(ちくま文庫)に拠りました。

ただし旧かなづかい等、一部改めて載せている点、ご了承ください。

 

 

私が書きました
中野由貴

花巻と宮沢賢治ファンの料理研究家
絵本・童話・食・宮沢賢治をテーマに創作、研究、執筆などを行っています。
著書に『宮澤賢治のレストラン』『宮澤賢治お菓子な国』(平凡社)、『にっぽんたねとりハンドブック』(共著・現代書館)ほか。
宮沢賢治学会会員、希望郷いわて文化大使。兵庫県在住。
花巻市民ではありませんが、イーハトーブ花巻出張所@兵庫(勝手に命名)から参加させていただきます。どうぞよろしくお願いします。