まきまき花巻食べたい明治時代から続く菓子店の伝統と今を訪ねて
明治時代から続く菓子店の伝統と今を訪ねて
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高鉱菓子舗は、花巻市街から北東にある大迫町の商店街にある菓子店です。店名に残る「高鉱」は、明治時代に創業した高橋鉱三の名をとったもの。100年以上続く伝統ある菓子店ですが、シュークリームなど今時の商品も作られています。

実はこちらのお店、僕にとっては一度食べたきりで忘れられなかったお菓子を作っているお店なんです。 今回の取材では、菓子作りを行う菓子工場と販売を行う店舗へ伺い、パティシエの高橋秀司さんと叔母様にお話を伺ってきました。昔から変わらず引き継がれていること、時代と共に変化してきたこと、その両方が見える取材となりました。どうぞご覧ください。

 

変えると得られぬ手づくりの「あじ」

高鉱菓子舗の社長高橋秀彰さん

▲工場であんを詰める、社長の高橋秀彰さん

始めに菓子工場へ、伺い菓子作りの様子を拝見しました。 高鉱菓子舗のお菓子は、日持ちするお土産用のお菓子を除き、多くの菓子が手作り。早朝から始めてその日の分だけ作られています。

なぜ今もお菓子を一つ一つ手づくりしているかというと、菓子の味と美しさを決める「あんばい」を見極めるのに五感が必要だから。分量などレシピはあるものの、焼き加減や煮詰め具合を見る目、成形する際の力のかけ方は、職人の感と技で判断します。変わらない味を作るために加減を変える。毎日同じように見えるお菓子も、作業の裏側には手作りでしかできない職人技が光っていました。

クルミ醤油をつけて焼かれるお茶もち

▲クルミ醤油をつけて焼かれるお茶もち、地元のお祭りの時などには焼きたてを提供

手作業で花びらがつけられる

▲一筋一筋花びらがつけられていく、生菓子の菊

時間勝負の飴の整形

▲飴の成形は時間との勝負、大きな笊で転がして丸い形に

美味しそうな焼きまんじゅう

▲しっとりした薄皮に、たっぷりあんこが入っている焼きまんじゅう

 

歴史ある菓子舗のニューフェイス

高鉱菓子舗のシュークリーム

高鉱菓子舗で外せないのがシュークリーム。 洋菓子店での修業経験を持つ、パティシエの高橋秀司さんが作るシュークリームが絶品なんです。 シュー生地は硬めに焼き上げられたザクッという食感、中には生クリームとカスタードを混ぜた濃厚なクリームが入っていて、ザラメの甘みがアクセントに。 このシュークリームは、秀司さんが東京から戻ってから作られるようになった商品で、店舗のみで販売されています。お店の歴史の中ではまだ若い一品ですが、予約がおススメの人気商品です。

 

引き継ぐ型と地域の伝統

オリジナルの落雁の木型

工場の奥から出してくれた落雁の木型。 「この型は、木型を作る職人さんを家に招いて、呑ませ食わせ接待して作ってもらった型らしいですよ。」 と、秀司さん。

和菓子の木型は、お店によって作る菓子の目方(重さ)が違うため、ほとんどが木型職人による一点物。 木型を使った菓子は、季節感のある菓子がお客さんに喜ばれる一方で、冠婚葬祭用の菓子は宗派や地域によって作法が異なるため、宗派や地域ごとの特徴を把握していないと時には厳しい言葉をもらうこともあるのだとか。

 

シンプルなものほど気を遣う

話をしてくれる秀司さんの叔母様

高鉱菓子舗の店舗へ伺うと、秀司さんの叔母様がお話を聞かせてくれました。 明治時代から続くお店は、時代の荒波を乗り越えて現在まで続いています。その中でも一番最近の大きな出来事は東日本大震災。震災後、それまで長く取り引きのあった食材の生産者さんが辞める決断をされたため、菓子作りに痛手だったと言います。

安価なもので代用することはできたそうですが、味わいの決め手となる食材だったため、決断したのは自分たちで作る事。知り合いの生産者さんに栽培方法を聞きながら手探りで作業を始め、最初の頃は思うように収穫できず苦労されたそうです。

続けてお話しくださった「シンプルなものほど、気を遣わないとズレてしまうの。」という言葉が、取材を通して感じていたことをスッキリ表現してくれる言葉でした。食材の一つ一つ、作業の一手一手に気を遣う事で、時代を越えて守りつないでいくのは形ではなく味と姿勢です。高鉱菓子舗では変わる時代の中でズレない価値観を持って、菓子作りをしていました。

私が書きました
田中 健太朗

岩手県で生まれ育ちましたが、花巻市に住んだことはありません。
それでも縁があったり、アンテナに引っかかる場所でした。
花巻市の面白いものに出会いながら記事を書いていきたいと思います。