まきまき花巻見たい市民がつくる花巻図書館50周年記念誌/市民文化のシンボルをもっと知ろう
市民がつくる花巻図書館50周年記念誌/市民文化のシンボルをもっと知ろう
39 まき
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今の花巻図書館が若葉町に移転・開館して50年。私たち市民グループは50周年記念誌をつくりました。花巻の図書館史、歴代館長のコメント、皆さんからの随想文集などを一部紹介します。

花巻図書館(若葉町)

市民皆さんの”関心”が大事「新図書館整備」

 建物の老朽化や狭さが指摘され、新花巻図書館構想が10年以上続いています。 しかし、「花巻ならでは・独自性・図書館のあるべき姿」や基本理念の議論が不十分のまま、”図書館を愛する”方々の「建設地論争」による意見の分断が、(図書館にあまり関心がない)大部分の市民を置きざりにしてしまい、整備事業を長引かせてはいないでしょうか?
図書館は郷土にどのような恩恵をもたらすか、どのような図書館であるべきか?を掘り下げる議論が重要です。
 「知の情報交流拠点」「まちづくりの核」として市民の知的自立を支援する役割を期待される未来の図書館。 まず、市民みなさんが関心や興味を寄せて図書館について知り学ぶことが大事です。

小冊子発行とホームページ配信

50周年記念誌冊子

市民がつくる花巻図書館50周年記念誌ホームページ
 3月末から記念誌小冊子を市内図書館や公共施設に配布。ホームページでも配信しています。

記念誌の主な内容は
随想文・エッセイ「私と花巻図書館」
 柏葉幸子さん(花巻出身の児童文学作家)の特別寄稿。図書館利用者、関係者(元館長・元職員・ボランティア)、生涯学習講師など、様々な視点からの随想文集
花巻の図書館はじまり物語
 明治20年設立の豊水図書館(花巻図書館の前身)と明治41年設立の私立伊藤図書館(東和町小山田村)

花巻図書館をもっと知ろう:花巻図書館史

2階こども室

花巻図書館 明治~令和/140年の軌跡

花巻図書館の前身「豊水図書館」は明治20(1887)年に「豊水社」が改称拡張した図書館です。豊水社は小原忠次郎(教師・実業家・書の大家)が明治18(1985)年が創設しました。その後、明治41(1908)年に城内の花城小学校内に蔵書が移転しました。昭和の戦後、昭和26(1951)年に花巻町役場(花城)に町立図書館を開設しました。昭和28(1953)年、高橋文次郎氏(今弘商店)の寄付により役場内から城内に移転し町立図書館として独立開館しました。建物が老朽化し手狭になったことから近代的な図書館整備が求められ、若葉町(旧花巻農業高校跡地)に昭和48(1953)年に今の花巻図書館が建設・開館しました。

図書館の推移
①豊水社→豊水図書館 明治20(1887)年~明治41(1908)年
        ↓
②花城小学校内豊水図書館(城内) 明治41(1908)年~昭和26(1951)年 

花城小学校跡地(城内) ↓

③花巻町役場内図書館(花城) 昭和26(1951)年~昭和28(1953)年
※現在、建物は「市民の家」として材木町に移転・保存されている。

花巻町役場(現・市民の家)

④花巻町立図書館(城内) 昭和28(1953)年~昭和48(1973)年

花巻町立図書館(城内) 花巻市役所のそば

花巻図書館(若葉町)

ぎんどろ公園が隣接

旧花巻図書館(城内)ものがたり

花巻町立図書館(城内)切り絵:阿部正介

 昭和48(1973)年に若葉町に移転・建設される前は、花巻町立図書館として、昭和28(1953)年、城内に開設。今も市役所のそばに現存しています。

◆柏葉幸子さん特別寄稿「花巻図書館の思い出」
 「私が子供の頃、六十年も前、花巻市立図書館は私の家のそばにありました。(中略)事務室にいる司書の方は私のピアノの先生のお姉さんでした。(中略)返された本を胸にかかえて書架の間を音もなく行き来する姿は本の王国を牛耳る侍従長のようでした。(中略)
 彼女を、そのまま物語の主人公に使わせていただいたりもしました。そして、あの図書館は私の『つづきの図書館』のモデルでもあります。

 (『市民がつくる花巻図書館50周年記念誌』 2023年 柏葉幸子氏による寄稿「花巻図書館の思い出」より)

寄付で建てられた市民への贈り物
 旧花巻図書館は、今弘商店創業者・高橋文次郎氏の寄贈(建設費500万)によって建てられました。
 「花巻町に文化活動の拠点がほしい」「お世話になった町の人たちへの心ばかりのしるし」との思い。
 父の政太郎氏は若い時、ハワイに渡って、ハワイの図書館で勤めながら独学で勉強し、通訳ができるまでなって花巻に帰ってきました。一労務者だった政太郎を教養人にして視野の広い人間にしてくれたのは、図書館のおかげであると文次郎氏は思っていました。子供たちや町の人のためににも、図書館が必要であると図書館を送ろうと考えました。

宮沢賢治の作品を読む会

花巻・賢治を読む会、月1回の例会の様子

 まなび学園で毎月第三火曜日に開催している「花巻・賢治を読む会」は今年で55年目になる歴史ある会です。
 前身の「宮沢賢治の作品を読む会」は昭和44年(1969)に旧花巻図書館(城内)の閲覧室で第一回が始まり、昭和48年に新図書館(若葉町)に会場を移しました。
 初代会長は、花巻図書館職員で提唱者である寺島昌子さん。寺島さんは賢治の末妹クニさんとは小学校時代に同級生で、花巻高等女学校時代には賢治の妹トシさんから英語を教えられたそうです。読む会の初期は、宮沢清六氏が何度か訪れたり、藤原嘉藤治氏や森荘己池氏など賢治ゆかりの方や教え子による講話会も行われました。

元・前・現役の花巻図書館館長にそれぞれお話を伺いました!

2階一般閲覧室

①中村萬敬(かずたか)元館長 (平成18年花巻市合併時の初代館長)
※令和6年3月にインタビュー

館長時代の思い出
 平成の「新花巻市」の合併に伴い、市内4図書館の情報・貸出システムを統合する作業を進めました。職員の仲間意識を高める交流会や、4館合わせての食事会(飲み会)もしました。賢治の企画展もよくやりました。
花巻図書館の良いところは?

 花巻図書館は宮沢賢治や高村光太郎など、石鳥谷は南部杜氏・酒関連などと各地域の特徴を現す蔵書量が多いです。 4館にある本をオンラインで予約したり貸出しするシステムが便利です。花巻(中央)図書館は、宮沢賢治関連の蔵書数が一番多いといえます。CDの数もたくさんあります。
期待する「新図書館像」は?

 花巻市民への情報発信、例えば地域課題の解決、子供向け本の情報などあらゆる情報を提供する図書館がいいです。 軽食など、市民がくつろげるコーナーもいいですね。企画展・展示展も積極的にしてほしい。

②梅原奈美  前図書館館長 (平成30年~令和4年)
令和3年10月掲載のまきまき花巻記事『新図書館のゆくえは?市民文化のシンボル「花巻図書館」のあゆみ』から転載
※令和3年9月にインタビュー 

●館長として取り組んでいること
 蔵書やレファレンスの充実、皆さんが本を選びやすいような展示の工夫や、職員に声をかけやすいカウンターの雰囲気づくりなど、皆さんにとって使いやすい環境になるように心がけています。図書館が利用者の皆さんが豊かな時間を過ごすための一助になればと思っています。
●花巻図書館の良いところは?
 市内4館はそれぞれ地域の特色に合わせた資料収集に力を入れています。花巻図書館では宮沢賢治など花巻出身またはゆかりのある方の書籍や研究図書の収集に力を入れています。
 花巻は岩手県内で最初にブックスタート(赤ちゃんと絵本を通じて親子のふれあいを進めること)を導入し、読み聞かせボランティアの皆さんや保健センターの保健師さんと連携しながらお子さんとご家庭に本を届けています。
 今はコロナ対策で思うような活動はできていませんが、お子さんの年齢に合わせた読み聞かせの絵本を紹介していますので、ぜひ図書館に足をお運びください。

2階こども室

③鈴木秀宜(ひでのり)館長 (令和5年~)
●館長として取り組んでいること
 図書館勤務一年目なので、まだまだ勉強中です。一日でも早く図書館のことを理解したいと思い、少しでも長くカウンターや書架に入るようにしています。市民の皆さんにとってより居心地の良い場所になるよう、閉架スペースにソファーを置いたり、表示の仕方を工夫して、”探しやすい・見つけやすい”図書館にしたいと考えています。
●花巻図書館の良いところは
 0~2歳、3~4歳、5歳~小学校低学年、と様々な対象年齢に分けたおはなし会(読み聞かせ)や、子供向けの映画会など定期的に開催しています。ご家族連れでお越しいただいても楽しめると思います。経験豊富な司書がたくさんいますので、調べたいこと、探したい本等のご要望があれば、遠慮なくお声がけ下さい。
●館長が考える「新花巻図書館像は」
 子どもから年配の方まですべての年代の方が訪れ、それぞれの目的に合った楽しみができる図書館として、人と本、人と人をつなぐ図書館になったらいいと思います。

花巻図書館玄関ホール・新聞閲覧室

「図書館への関心を高めたい」一緒に考えましょう。

市民活動ガイドブック(令和6年3月)より

若い方・学生さんの参加を期待します!

新花巻図書館-まるごと市民会議(代表 中村萬敬)ビブリオはなまきHP

 ニュースレター通信やホームページでの情報発信、新図書館整備試案検討委員等の活動をしています。図書館は「まち(ひと)づくりの中核施設」、地域の文化度を示すバロメーター、世代を超えた学びのセーフティネットの役割が期待されます。建設地決定や建設完成が着地点ではありません。「図書館は成長する有機体である」(インドの図書館学者ランガナタンが提唱)。喧々諤々(けんけんがくがく)と考えを自由に出し合い、学んでいくグループ団体です。
 記念誌の随想文募集では、40歳代以下の若い方からの投稿が少なったのが残念でした。関心ある方は気軽にお問い合わせを。
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参考文献・資料
・花巻市図書館要覧(花巻図書館)
・広報はなまき(花巻市役所)
・東和町史(東和町)
・花巻の文化を高めた先人(佐藤昭孝)
・岩手近代図書館運動史(七宮氏子2001)
・今弘商店創立55年記念(高橋文吉1984)  

私が書きました
白岩拓樹

注文のないマッサージ師。新花巻図書館-まるごと市民会議・事務局。
花巻・賢治を読む会会員。紫波町韓国語サークル会員。
北海道~大阪まで引っ越し15回の転勤族を経て花巻に移住して20年。
趣味は図書館めぐり韓流とハングル。