東京と花巻の2拠点生活に挑戦中です。
花巻に頻繁に来るようになってから、いつの間にか「宮沢賢治」ではなく「賢治さん」と言うようになっていました。この「まきまき花巻」にも賢治さんにまつわる記事が数多くありますが、身近に感じるようになってから変わったようです。
賢治さんとの最初の出会いは、小さな頃に読んだ絵本『注文の多い料理店』。小学生低学年だったと思いますが、それまで読んだ「童話」や「物語」のわくわくする感じとは異なる、ちょっと怖いような不思議な読後感がありました。
その次に賢治さんを意識したのは、ロックバンド「スピッツ」が大好きな友達から、ボーカルの草野マサムネさんが宮沢賢治好きと聞いた時です。その友人と小岩井農場の特設会場で開催されたスピッツのコンサート(1997年)に行くことになり、曲をほぼすべて聴きました。すると、明るい曲調であっても歌詞にはどこか諦めや達観のような空気が漂っていて、でも希望や優しさも同居している……賢治さんの作品と通じるものを感じたのです。改めて賢治さんの作品をじっくり読むきっかけになりました。
そして、新花巻駅の新幹線発車のメロディーにも使われている「星めぐりの歌」です。あるジャズミュージシャンのライブで思いがけず聴いたのですが、何拍子か迷うような不思議なアレンジ。思えば、その歌詞にも独特のリズムがあります。ぜひ声に出して読んでみてください。10文字ごとに区切られた歌詞が、まるで星々の軌道を追うように響きます。賢治さんの文章は音楽的ですが、実際に音楽に長けていたことを改めて思い出しました。
今年の夏、また賢治さんについて考える機会がありました。
一つ目は「真昼の星めぐり」です。
これは「わらび座」と「ヘラルボニー」によるミュージカルで、初演が花巻市文化会館大ホールで7月20日に行われました。「広報はなまき(令和7年8月1日号)」の表紙でもその様子が伝えられていますが、「劇場と世界を隔てる、先入観や常識という名のボーダーを超えた、誰もが楽しめる劇場体験」ということで観客が光るボールを手にしています。
そう書いている私自身は、残念ながら日程が合わず観劇できませんでしたが、とても気になっていました。劇団より写真を提供していただき、掲載の許可をいただきました。美しい色彩が幻想的です。どんなストーリーが繰り広げられるのか想像が膨らみませんか?「星めぐりの歌」も劇中で重要な役割を担っているそうです。

(劇団より許可を得て掲載しています。転載等お控えくださるようお願いいたします)
幸い、盛岡を含む6都市で公演が続けられますから、ぜひ賢治さんの世界がどう表現されているか、出かけてみてください。(スケジュールはイーハトーブシアターのサイトをご参照ください)
そしてもう一つ、賢治さんの世界を体感するチャンスがあります。
「童話村の森ライトアップ2025」です。特に8月30日、31日の「イーハトーブフェスティバル2025」は賢治さんの作品に想いを寄せる多分野で活躍する多彩なゲストが参加し、作品世界とのつながりを楽しむ場となるそうですから、地元の方にも観光で訪れる方にもお勧めです。
花巻で、また別のあなたの“賢治さん”に出会えるかもしれませんね。