8月の終わり、花巻文化会館大ホールで花巻図書館主催のトークイベントが開催されました。ゲストは2025年本屋大賞を受賞された、阿部暁子さんです。
阿部暁子さんが本屋大賞を受賞された作品「カフネ」は、友人から借りて読了していました。「すごくいい本だから読んでみて」と言われたのですが、現代作家さんの小説を読むのは久しぶり。ドキドキしながら読み進めると、吸い寄せられるようにどんどん引き込まれていきました。
自分と同い年くらいの主人公、薫子さんの視点でストーリーは展開していきます。性格が姉に似ていたので、こっそり重ねて想像していました。薫子さんの弟、春彦さんは、どことなく弟に似ていて、親近感があるなと思いながら読んでいました。
そうして読み終わった頃には、完全に「カフネ」と阿部暁子さんのファンになっていたのです。地元の新聞社さんも記事に大きく取り上げてくださったので、とても嬉しく拝見していました。そんな中、花巻図書館の企画で、阿部さんのトークイベントが開催されるとのことで、まきまき花巻の市民ライターとして、まきまき花巻のマスコット「まきぼう」を連れて行ってまいりました!
そりゃあもうルンルンです。連日仕事や私用で疲れていたことなどスポンと忘れるくらい。会場に行くと、メッセージボードがあったので、すかさず書かせていただきました。
作中に出てきた美味しそうなパフェのイラストも飾ってあり、テンションがあがります。このパフェが出来上がった経緯もそのシーンも、優しくて温かくて大好きです。
そして!会場では限定のサイン本が販売されていました。やったー!!買う時期を考えていたのですが、それが今日でよかったです。かわいい栞付き(*^_^*)
イベントには500名ほどの方々が来場され、壇上に阿部暁子さんが登場すると会場は大きな拍手で包まれました。ブルーのワンピースがとってもお似合いで、落ち着いた印象でしたが笑顔が可愛いらしい方でした。本屋大賞受賞の知らせを受けた時は、驚きすぎて実感が湧かず周りからの反応で少しずつ、とおっしゃっていました。
ここからは、印象に残った内容(本当は全部)を抜粋してお伝えします。
第一部は、フリーアナウンサーの味園史湖さんとの対話形式でした。
花巻の図書館での思い出や宮沢賢治作品についてなども語られました。宮沢賢治作品が好きなわたしとしては、阿部さんがどうお話するのか気になったのですが。「注文の多い料理店」や「よだかの星」をあげられ、面白くて衝撃的、怖くて美しいと表現されていました。ちなみに、花巻のお土産で有名な「よだかの星」というお菓子がお好きだそうです。私も紅茶といただくのが大好きです。
読書や影響を受けた作家さん、作品についてはどんどんお話に熱が入っていくのを感じます。森絵都さん、小川洋子さん、よしもとばななさんは私も読んでいたので嬉しくなりました。小説家を目指そうと思ったきっかけは、高校生の時に賞をもらったことだそうです。やっぱり若いころから好きなことの才能があったのだなと羨ましく感じました。そんな阿部さんも、執筆をしようと思ってパソコンの前に座ったはいいものの、気がつくと別のことをしてしまっている事もあるそうです。なんだか可愛い。
作品の登場人物にモデルはいるかという質問は、ぜひとも聞いてほしいと思っていました。「モデルはいない」と聞いたとき、正直意外でした。小説家さんは多かれ少なかれ、身近な人をモデルにしているのだろうと思っていたからです。キャラクターの生き生きしたやり取りや行動は、阿部さんが書きたいものと一緒に育っていくのだとか。そんな風に生まれていたなんて驚きましたし、「カフネ」以外の本も絶対に読みたくなりました。
第二部は「カフネ」を出版された、講談社文芸第二出版部部長の河北壮平さんが壇上に上がり、阿部さんと対談形式で始まりました。本屋大賞の事務局の方から電話をもらった時、腰が抜けるほど動転されたそうです。改めて大変な賞であることを感じました。「カフネ」を書き始めたのは、2021年から2022年。ちょうどコロナ禍で、オンラインでの打ち合わせも頻繁になったそうですが。阿部さんは指摘をされるほど燃えるタイプで、徐々に形を変えていき、本になるまで一年近く直し続けたと振り返っていました。それでも打ち合わせは前向きで楽しかったと聞いて、阿部さんのお人柄が伝わってきました。
最後は、トークイベント参加者様からいただいた質問コーナー。全部で48通も集まったそうです。
ここでも私が印象深かった内容をしぼって、3つご紹介します。
Q1.登場人物の名前の決め方は、どのようにしているのですか?カフネの場合は?
A.カフネ以外にも言えますが、何となくのキャライメージで連想しています。姓名判断を使うこともありますよ。
Q2.本を書き続けるために実践していることはなんですか?
A.ぼーっとする。寝る前などに思いついたらスマホにメモ。常にアンテナを張っています。
Q3.作家になっていなかったらどんな職業についていましたか?
A.さすらい人。職を転々としながら旅をしていたと思います。
「カフネ」は、ポルトガル語で“愛する人の髪に指を通す仕草”ということを、私同様初めて知った方も多いのではないでしょうか。なんだか甘くて柔らかいケーキみたいな響き。読み終わった時に、じんわり温かい幸福を自分の中ですくったように感じました。
イベントを通して、一冊の本を読んで集まった人たちと同じ空間で時間を共有するっていいですね。私は、課題の本を読んで参加する形式の読書会に参加したことはありませんが、実はとても面白いかもしれないとこっそり思ったりしました。これからも本のイベントにもっと沢山参加したいです。本当にありがとうございました。