花巻・賢治を読む会 定例会の様子
今年は宮沢賢治没後90年。映画「銀河鉄道の父」が話題になっています。賢治の作品を読んで親しむ「花巻・賢治を読む会」は今年54年目の歴史ある会です。会員には賢治の父の政次郎さんと交流のあった女性がいます。賢治さんを身近に感じる世界に触れてみましょう。
花巻・賢治を読む会 半世紀のあゆみ
まなび学園で月1回定例会(第3火曜日)
「花巻・賢治を読む会」は1969年(昭和44年)に花巻市城内の市立花巻図書館の事業の一つとして発足しました。月一回の例会は皆さんが作品を輪読して、賢治さんの人間性や時代背景を味わうスタイルです。初期には、賢治さんの弟の宮沢清六さんや藤原嘉藤治さん、森荘巳池さん、照井登久子さんや賢治研究家などゆかりの方を講師に招いています。2010年(平成22年)には、読む会の活動が評価され、第20回イーハトーブ賞の奨励賞を受賞しています。 2020年(令和2年)には「花巻・賢治を読む会50年のあゆみ」という記念誌をまとめました。花巻市内図書館4館などで読むことができます。
旧花巻図書館(花巻市城内)初期の例会場
花巻・賢治を読む会記念誌(2020年・令和2年)
賢治ゆかりの地めぐり
1977年(昭和52年)から、年一回のペースで行っています。これまで花巻市内(花巻温泉バラ園、花巻農学校(現:岩手県立花巻農業高等学校)、イギリス海岸など)から、県内や県外の青森県、宮城県、山形県など賢治に関する名所を訪れました。2014年(平成26年)には京都を訪れ、東・西本願寺や平等院などを巡り、関西宮沢賢治の会の方々と親交を結びました。2019年(令和元年)は山形県新庄で農村指導者として活動した松田甚次郎の里を訪ねました。令和2年以降はコロナ禍によりめぐる旅は休止しています。
京都宇治:平等院鳳凰堂(2014年)
会員みなさんの声
現在は会員15名。大原晧二代表は花巻温泉で40年間勤務され、発足当時からの唯一の会員です。会員のメンバーは50代から80代が中心。入会された動機は様々です。
「花巻に居ながら、賢治の作品をあまり読んでこなかったので、やり残した宿題をしに入会しました。」「今の社会にも通じることがあるので若い人にも読んでほしい」「自分一人では読めない作品も、皆さんと一緒のほうが理解できそう。」「今まで賢治さんには興味がなかったが、気候変動や環境破壊・SDGsが注目されている今、賢治の生き方や農業芸術が未来の生活モデルになるのではないか」
賢治の父・政次郎さんとの出会い
宮沢政次郎(1874年~1957年)
読む会の会員、東和町在住で卒寿に近い山田幸子さんは徒歩とJRを使っで読む会に元気に参加しています。70年前、高校卒業するころの幸子さんは2年半くらい花巻の宮澤家に出入りしていました。70代半ばで視力の落ちた政次郎おじいさんに、手紙や新聞、本などを読んでさし上げるお手伝いをしていました。幸子さんは演劇部だったので、読み聞かせの声の張りの良さは今でも健在です。
過去に上映された宮沢賢治を題材にした映画では、政次郎役を渡哲也や仲代達矢が演じ、まじめで厳格なイメージがありますが、幸子さんの印象は少し違うようです。
「高校卒業の年、校医で政次郎さんの主治医の佐藤隆房先生の勧めで、何も知らずに宮澤家に連れていかれて、読み聞かせのお手伝いをすることになりました。政次郎さんは気難しいということはなく、いつも奥さんのイチさんと一緒で仲が良い夫妻でした。読む本の多くは私が学校の図書室で選んだ本でした。吉川英治の新平家物語を読んだらすごく気にいって、吉川さんにファンレターを出したようです。」
幸子さんは若い時、賢治の作品にあまり触れなかったことの心残りがあり、賢治作品を仲間のみなさんと自由に読むことで懐かしく当時を思い返しているそうです。
映画で宮沢政次郎さんを演じた名優たち
仲代達矢・渡哲也・役所広司
★映画「銀河鉄道の父」2023年5月全国上映
直木賞受賞作品「銀河鉄道の父」・原作門井慶喜
「父でありすぎる」政次郎と生活力のない「バカ息子」賢治と家族愛を描く。
政次郎:役所広司 賢治:菅田将暉 トシ:森七菜
文化会館:4月に特別試写会がありました。
今後の賢治を読む会
賢治さんの作品を愛好する人たちで一緒に読む「正統派」の会は50年続きました。生涯学習活動としても市民への広がり(市民劇や読み聞かせ、朗読会、地域史研究など)を続けてきました。会員は50代から80代の方が中心で、政次郎さんらがいた戦後の風景や賢治の足跡を想い起こす話題もでて、懐かしさと発見がある会です。
今も、会員の方はそれぞれ、雨ニモマケズ朗読会や市民劇、歴史研究、図書館整備関連などの活動を広げています。コロナ禍が落ち着いた今年は、ゆかりの地巡りも再開する予定です。次の世代にも継承していきたいので、興味のある方はぜひ参加してみてください。
花巻・賢治を読む会HP