「Lit work place(リットワークプレイス)」。
花巻駅から徒歩30秒。常に12種類もの個性豊かなビールが待ち受ける最強タップルームだ。
2019年のオープン以来、今年は盛岡駅構内にも新店舗を構えるなど、勢いを増している。
メインは自社でつくるクラフトビール。
全12タップという豊富なラインナップに加え、地元食材を使った料理が並ぶ。
ビールも、フードも、雰囲気も抜群。花巻の夜を明るく照らす場所だ。
花巻に、“野獣”がいる。
そのLit work placeと同じ建物の奥に構えているブルワリー、「BrewBeast」。
同じく2019年に誕生して以来、県内外のイベントへ精力的に出展し、いまや全国にファンを持つ。
2024年だけで48種類の新作ビールをリリース。
今年は毎月新作を2種発表するというハイペースぶりだ。
この勢いの根底にはブルワリー代表の想いがある。
「ビールの可能性を広げたいから、幅広いビール作っている。『ビールが飲めない』とは言わせない」
そう語るのは、“ビースト”こと代表の高橋亮さんだ。
左から、BrewBeastの高橋亮さん、渋谷ビールボーイのKさん、BrewBeastのクマガイさん、イオリさん
全部飲みたい、全部面白い、だからまた来る。
10月某日、Lit work placeを訪れると、花巻産ブドウを使ったという新作「B-Mellow」が目を引いた。
ひと口目はペティヤン(微発泡ワイン)のように軽やかでフルーティ。
温度が上がるにつれてホップのまろやかさが顔を出し、終盤は白ワインのような酸味が立つ。
味わいの余韻に、思わず微笑む。ワイン好きも、きっと唸る一杯だ。
定番の「IMPACT」は、柑橘の香りが印象的。果実を使わずにフルーティさを実現する秘密は、ホップをフレッシュなまま使用している点にあるという。
そんな話を聞くだけで、味わいが特別に感じてしまう。
その日、もう一つユニークなビールにも出会った。
アメリカのお菓子のような、ジャンクな甘さとポップな香り。
映画館でポップコーンと一緒に飲みたいような、遊び心に満ちた味わいだ。
「誰でも好きなビールは作れない。でも、誰かにぶっ刺さるビールを作りたい」
代表の亮さんの言葉通り、BrewBeastのタップには常に“誰かのための一杯”がある。
異業種コラボが生む、新しい物語。
BrewBeastはその自由さで、多彩な企業とのコラボレーションにも挑んでいる。
地元花巻の企業から日本を代表する大手メーカーまで、業種も距離も問わない。
今回の相手は渋谷PARCOにある「立ち飲みビールボーイ」だ。
ビールボーイは、国内クラフトを中心に常時10タップを提供する人気店。
客層の半分はインバウンドで、「日本のクラフトビールを飲みたい」という声に応え続けている。
BrewBeastとビールボーイのコラボは今年で3回目。
4周年、5周年と節目を彩るビールを共に作り上げてきた。
今年は全国6ブルワリーとの周年コラボのうち、東北から唯一の参加がBrewBeastだった。
東北に、クラフトビールで恩返しを。
ビールボーイの店主・Kさんは東北出身。
「周年ビールは東北で作りたい。クラフトビールで地元に恩返ししたい」と話す。
今年のコラボでは「さっぱり飲める、でもモルトを感じるビール」をテーマに開発。
アルコール度数は控えめながら、味わいはしっかりと芯があるビールになる予定だ。
化学と感性のせめぎ合い。
お湯にモルト(麦芽)を入れて糖を引き出す――これがビールのもと、麦汁だ。
搾りかすを取り除き、ホップを加え、酵母を投入して発酵へ。
約1ヶ月後、ビールが完成する。
モルトやホップの種類、温度、投入のタイミングで味わいは無限に変化する。
複数のホップを重ねることで、香りと苦味のレイヤーを描き出す。
その工程はまるで化学実験のようで、温度計を見つめる姿は真剣そのものだった。
レシピに合わせてモルトをセレクト
モルトを入れたタンクの中。温度を操るのも、ビールづくりの魔法の一手。
これがビールの香りの源、ホップ。
ひとつのビールに、ひとつの物語。
完成したビールは、11月21日のビールボーイ6周年パーティでお披露目される。
まずはLit work placeで、あるいは渋谷で。
その誕生を、ぜひ味わってほしい。
「すべてのビールにストーリーをつくりたい」——
その言葉通り、“野獣”BrewBeastはこれからも一杯一杯の物語を作っていく。