取材を終え、まだ残る臨場感に浸りながら味わう香り豊かなオリジナルブレンドの珈琲と
「オリザ」という名のロールケーキ。
これは、М@chou(マッシュ)が作る「グスコーブドリの伝記」から名付けられたふんわりとして、
とても美味しいロールケーキ。
これをいただきながら、今日の取材を振り返ってみた。
<林風舎2階のカフェにて>
訪れたのは10月10日
花巻の駅の近くの市営駐車場に停めれば「林風舎」はすぐ。
その日は宮沢和樹さんから話を聴くことになっていた。
初めての場所で、人と会うわくわく感を抱いてドアを開けた。
ドアにはステンドクラス。
開業して25年の「林風舎」は、1階にはオリジナルのグッズ、
宮沢賢治をモチーフにした版画、置物などがたくさん並び奥には原稿の複製などもある。
2階はカフェで、書籍などもあり、日曜にはピアノの演奏も。
ここで、嬉しいことに宮沢和樹さんから賢治にまつわる話を聴くことができた。
正面の暖炉の上に、微笑む写真がある。
「宮沢賢治記念館とは別の形で、一族としてゆかりの物を紹介する場所が必要だった」
と和樹さんは話しだした。
「林風舎」は、賢治ゆかりの物などを揃え、訪れた人に、
カフェでゆったりとした時間を過ごしてもらいたいという思いを込めて造った。
特に宣伝もしていないのに、世界各国から訪れる人が後を絶たない。
また花巻のカフェで検索した人が、ふらりと立ち寄ることも多いそうだ。
お爺さん(宮沢清六氏)が大好きで、色々な話を聞くのが楽しみだった。
カフェにはアンティークな家具を置き、「注文の多い料理店」をイメージしたそうだ。
ところが「古い物に囲まれていた祖父からすれば、アンティークはあまり好みではなかった」と笑う。
和樹さんは、続けて、
「オリザというロールケーキが花巻で作られていて、ここにもあります。」
グスコーブドリの伝記に出てくる稲の学名に由来した名前。
「賢治の童話に出てくる名前や言葉などは、学術的な要素が強く、感心します」
確かに、この物語には、潮汐発電や温室効果ガスによる冷害対策の話が出てくる。
子供のころに学校で見た「風の又三郎」の劇や図書館で読んだ「銀河鉄道の夜」は、
どこか不思議を超えた不安な感じで記憶に残っていたことを話すと、
「記憶に残るんです。また、いつか読み返す、それでいいんです」と笑う。
確かに、頭に刻まれた賢治の世界は、成長するにつれ、どこまでも広がってきた。
話を聞いて、また一枚の扉が開いた。
瞬く間に時間が流れていた。
取材のお礼をいい、ひとり2階に残り、聞いた話を思い起こしながら、
食べる米粉の「オリザ」は格別だった。
帰り間際に、ここでしか買えない手帳を見つけた。
「手帳は何冊もあり、文字で埋まっていて賢治の頭に湧き上がる物語を書く方が追いつかない。
そんな思いでメモしていたのではないでしょうか。
そして、「雨にも負けず・・・そういうものにわたしはなりたい、ですから、
『なりたい』わけで、賢治もまだ『なれてはいなかった』ということです。」
と言った和樹さんの言葉が強く印象に残った。
あれから、手帳をパソコンのそばに置いて時々、開くたび僅かに、
宮沢賢治の世界に近づいたような気になる。
「林風舎」を知ってはいても意外に訪れていない人もいると思います。
近くを通ったら、ちょこっと寄ってみて下さい。