はじめまして! 花巻移住1年生です!!
皆さん、こんにちは! 5月から活動しております花巻市地域おこし協力隊・あかつです。
生まれ育ちは福岡、20年の社会人生活を東京で過ごし、このたび岩手に北上(属にいうIターン)してきた私は、この花巻で見るもの・聞くものすべてが初めて。 移住のために頑張って自動車免許を取得し、人生初の車をブン回し、 いろんな場所に飛び回っていた大充実の約3か月、花巻にどっぷり浸かっております。
結論‥‥‥花巻に来てよかった! これから出来立てホヤホヤ移住1年生の目線で、花巻をレポートしていきたいです(^^)
第1回目は、やはり自分が協力隊の活動テーマに掲げる「伝統工芸」についてお届けします。
5月から1軒ずつ工房を訪問させていただき、 職人の皆様に興味深い話を聞かせてもらったり制作体験をさせてもらったりと、 ものすごく貴重な時間を持たせていただいております。 職人さんの熱い情熱と魂は、本当に刺激になる (´;ω;`)
そんな花巻の伝統工芸で今回ご紹介するのは、東和町・下浮田にある『さき織伝承館』です。
さき織へのいざない
【さき織】とは、漢字で表すと【裂き織】。 簡単に言えば、【裂いた布を使って織りあげた織物やそれを使った品物】のことです。
通常、布は機織り機にかけられた「縦糸」と「横糸」を組み合わせて織られます。 普通の布なら「縦糸」も「横糸」も「糸」が材料になりますが、 さき織は、「横糸」代わりに「裂いた布」を使います。
時は江戸時代、貴重な綿や絹の代わりに古い布を使って織ったのが【さき織】の始まりでした。※諸説あり 「捨てる」より「再利用」。 現在でも注目されているSDGs(エス・ディー・ジーズ)の考え方を、 昔の人たちは先駆けて実践していたので凄いです。 さき織伝承館でも、布団の張り替えで要らなくなったシーツを布団屋さんから仕入れたり、 誰も着なくなった着物を引き取ったりして、さき織の材料に使用しているそうです。
そして古布を使用する「横糸」と同様に、「縦糸」もまたさき織を構成する大切なパーツになります。 「機織り機に縦糸を取り付ける工程までで、仕事のほとんどが終わる」 機織りに携われる皆さんのほとんどが、口を揃えておっしゃりました。 それほど手間暇をかける縦糸の仕込みとは‥‥‥?
縦糸を制する者は、さき織を制す
当たり前なのですが、①の束ねられた糸は機織り機に取り付けなければ機で織ることはできません。 上手く機織り機に取り付けられるように、束になった糸をきれいに解いて巻き直す作業を行います。
なんということでしょう。 上記の画像に写っている縦糸ひとつひとつに、①②③で作ったまき糸が必要なのです‥‥‥!! 機織り機1台につき、半日かかる縦糸かけ作業。 大人数の体験予約が入ると、この作業が数日に及ぶとのことです。
ここまで事前に準備してもらった機織り機で、 今回は地域おこし協力隊の先輩・今野隊員、同期の平川隊員、そしてあかつの3名が さき織体験に挑戦しました!
レッツ・トライ!『さき織り』
体験コースは、【コースター2枚】もしくは【名刺入れ1個】が選べます。(いずれも1500円) 協力隊として伝統工芸担当というからには、やっぱり身の回りのものを伝統工芸で固めたいものです。 というわけで、名刺入れを選びました。
①まず、実演交えて機織りレクチャー♪
軽やかな手さばきと足さばきで機織り機を操るのは、館長の小田島英樹さん。 「さき織をしているのは女性だけだろう」とすっかり思い込んでいたので、 手慣れた手つきで横糸を通す様子に思わず感嘆、しかもその姿カッコイイ。 男性の皆さんも、ぜひ機織りにトライしてみては如何でしょうか?
②次に、横糸をセレクト
小田島さんからかっこよくレクチャーを受けた後は、使用するさき布を選びます。 縦糸はすでに機織り機でスタンバイしているので、選んださき布は横糸に使用します。 布を裂く際のポイントは、片方を裂き切る前に止めて、反対方向から続いて割いていきます。
体験では、すでに出来上がった横糸を使います。 さき布は1種類でシンプルに織り上げるもよし、2~3種類使って縞模様に織り上げるもよし、自由です。 私は、淡いパステル調の「ピンク」・「黄緑」・「水色」を選んでみました♪
③続いて、機織り機をセレクト♪
機織り機にかけられている縦糸の色味はさまざま用意されています。 横糸と縦糸の組み合わせは無限大! いろんな配色のバリエーションが生み出されるのです。 小田島さんも、「未だに『こんな感じに仕上がるのか』と、驚かされることが多い」と言います。
織り手と裂き布の一期一会で、世界にたったひとつしかない究極のオリジナル1点ものを創り出す。 これこそがさき織りの魅力です!
④さぁ、いよいよ織っていきます!
機織り機の下にある2枚の踏木(ふみき)を交互に踏みながら、横糸を滑らせていきます。 コースターの場合は17~18回(1枚分)、名刺入れの場合は2倍の回数です。 「横糸を通す‥‥‥(踏木を)踏みかえる‥‥‥トントン(筬を手前に引いて横糸を詰める)‥‥‥」 手順を間違えないように、ブツブツ呟きながら織っていきます。 さすが初心者、左右で折り返した端っこの耳部分が不格好で揃いません。 しかし、それも味。めげない。‥‥‥いや、むしろ愛着が沸く。
織物に模様を入れたい場合は、その規模に応じて足元の踏木の枚数を増やします。 今回のような体験の場合は、踏木は2枚がスタンダードです。
⑤ここから仕上げをバトンタッチ!
必要な長さに織りあげたら、いよいよ名刺入れに加工していきます。 ここからの工程は小田島さんに交代です!
⑥ついに完成です!
名刺ケースだけでなく、カットして余った部分で栞(しおり)もサービス! きれいに包装してくださいます♪ 正直、体験料1500円は「安いでしょ!」というくらいの大サービスです(^o^)/
出来上がった品々は、みなさん個性が光っていて、それぞれ「らしさ」が滲み出ています。 今も協力隊の名刺を入れて毎日持ち歩いています。 やっぱり手作り品は、取り出して見つめるたびに心がウキウキ躍りますね!
大充実!素敵なさき織り作品の数々
さき織伝承館には、体験するための機織り機エリアのほかに、さき織で織った織物を利用した服や小物などの展示部屋もありました。 さき織職人として活躍した小田島秀子さん(英樹さんの祖母)の作品となります。 かなり前に仕立てたとのことですが、今の時代でも十分通用するファッション性。 ‥‥‥羽織りが可愛い! 是非着てみたいです(・∀・)
おでってくなんしぇ、東和・浮田
今回はさき織の体験を通して、自分で作りあげる喜びを再確認することができました。 改めて、やっぱり手作り工芸って最高ですね! そんな感動を与えてくれた伝承館の建物から望む風景に、思わず岩手弁が口から零れます。 (「おいでください」=「おでってくなんしぇ」‥‥‥あっているだろうか‥‥‥) 見渡す限り田畑の緑が広がる小高い丘の上に、さき織伝承館はあります。
そんなさき織伝承館がある浮田地区周辺には、他にもみどころが満載! さらにドライブで視界80%グリーン色の中を、この夏、走りに来るのも最高です。 建物の脇にマップ掲示板が立っているので、浮田を訪れた時のご参考に♪
古布が新しい姿に生まれ変わる~裂き織りの魅力~