まきまき花巻見たい古布が新しい姿に生まれ変わる~裂き織りの魅力~
古布が新しい姿に生まれ変わる~裂き織りの魅力~
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 「裂き織り」とは、布を紐状に裂いたものをよこ糸として織り込んだ織物のことです。この辺りでは南部藩時代から伝わっているそうで、昔は農閑期の収入源として女性たちが各家々で織っていたそうです。

 裂き織りに使われる布は主に、使い古した着物や浴衣など不要となった布です。今のように物が豊富に無かった時代から受け継がれる、伝統的なリサイクルの方法です。

 私が初めて裂き織りを知ったのは、花巻の南部さき織りサークル「あすなろ会」のみなさんの作品でした。素朴な色合いと手織りならではの温かみのあるデザインに魅かれ、そこから裂き織りに興味を持つようになりました。

 今回、活動場所にお邪魔し、裂き織りのことや、活動の様子についてお話しをお伺いしました。なお、今回の取材には、地域おこし協力隊で花巻の伝統工芸のプロモーションを担当している今野陽介さんにも同行していただきました。

 

仲間と楽しむ裂き織りづくり

 活動場所は、上町商店街にある岩田ビルの2階の一室です。月曜と水曜の週2回、ここに会の皆さんが集まって裂き織りをしています。まずは、代表を務める星泰子さんにこの会についてお話を伺いました。

 「あすなろ会は、市の長寿福祉課の生きがい対策事業の一つとして裂き織りに取り組んでいた人たちが独立して、10年前から活動している趣味の会です。現在メンバーは60代から90代まで18人です。私達は誰か一人が教えるんじゃなくて、皆さんベテランなので、お互いに教え合いながら自主独立でやっています」

 ほとんどがこの会がはじまった頃からのメンバーだそうで、和やかな雰囲気で楽しそうに作業されているのが印象的です。「みんな楽しくてやめられないんですよ」という星さんの言葉に、他の皆さんも笑顔で頷いていました。

▲布を裂く人、織る人、各自で作業をしています

 

 裂き織りにふさわしい素材を尋ねたところ、「たて糸は木綿かレーヨンの糸、よこ糸に使う布は木綿や絹などで、新しい布よりも古い布の方が裂きやすいです」とのこと。

 たて糸は、機織り機にセットする綜絖(そうこう)と呼ばれる部品に通します。

 それぞれの綜絖にセットされたたて糸の間に、よこ糸を巻き付けた杼(ひ)を通しながら織っていきます。ここの機織り機は綜絖枠を4枚取り付けています。枠の数が多くなるほど、より細かな柄をつくることができるそうです。

▲よこ糸となる布は紐状に裂きます

▲紐状になった布の玉

▲綜絖針に通されたたて糸

▲きれいな小花模様が織られています

 

裂き織りを体験させていただく

 今回は事前にお願いをして、特別に少しだけ「平織り」の体験をさせていただきました。平織りは、たて糸とよこ糸を交互に織っていく1番単純な織り方です。機織り機の足元にある6本の踏木のうち2本だけを交互に踏みながら、たて糸の間によこ糸を通すことを繰り返していきます。

 実は機織り機というものに触わったのは今回が初めてだった私。簡単な織り方とはいえ、よこ糸を通すだけでも四苦八苦でした。会の方々に、正に手取り足取り丁寧に教えていただきながら、何とか数センチ織ることができました。一方、一度裂き織りを体験したことがあるという今野さんは、最初こそ星さんから教えられていましたが、後は一人でも手際よく織り進めていました。

 複雑な織り方になっていくと、踏む踏木の数も、綜絖の数も増えていきます。体験してみたことによって改めてみなさんの織る技術の高さに驚くとともに、初めて織ることの楽しさを味わうことができました。

▲丁寧に教えていただきながら裂き織りの体験をさせていただきました

▲私達が体験で織った裂き織りです

 

魅力的な作品に変身

 みなさんはデザインも自分たちで考えているそうです。「たて糸は同じでも、よこ糸の違いで個性が出ます」と、星さん。裂き織りは、同じデザインでもどんな布を使うかによって織物の表情が全く変わります。布ならではの微妙に不規則な色合いや風合いが、個性豊かな織物を生み出します。

 織り上がったものは、タペストリーやカバン、ペンケース、座布団カバーに衣服まで、様々な作品に仕立てられます。カバンを一つ作る際にかかる時間を尋ねたところ、織る作業からだと約1週間ほどでできあがるそうです。

 

▲代表の星さんが肩にかけているカバンは、会のメンバーが作ったもの

▲活動部屋の壁にかけてある裂き織りのタペストリー

▲柿渋や胡桃などで絹を染めて織った衣服

▲色の組み合わせが素敵な座布団カバー

 

 裂き織りは、大量消費することが当たり前になっている今の世の中において、物を大事にする精神も私たちに伝えてくれます。今回、初めて布を裂くところから裂き織りの作業を見させていただき、使わなくなった布を素敵に生まれ変わらせることができる裂き織りの素晴らしさを改めて感じました。

 あすなろ会のみなさんの作品は、現在、花巻駅前にある林風舎と、岩田ビル1階の賢治の広場横のウインドー(上町口バス停のすぐ近く)にて展示販売しているのみとのことです。素敵な作品の数々をぜひ実際にご覧ください。

▲賢治の広場横のウィンドウに季節に合わせた展示をしています(写真は桃の節句の時期の展示)

私が書きました
伊藤ゆき

花巻生まれ。賢治の広場のスタッフをしています。