昨年7月、吹張町の一角、やぶ屋向かいにかわいいギャラリーがオープンした。といっても、グランドオープンという形ではなく、オープン後も少しずつ店内を整えてきたのだそうだ。企画展も、今年の7月から9月初めまで開催した写真展が初めてだったとのこと。スペインに住むお孫さんが、キューバ旅行時に同国の街角を撮影した写真の個展だ。
このGallery MVSEOACACIA(ムセオアカシア)を経営するのは小田秀美さん。もともと盛岡で、平日は勤めながら、週末のみの骨董を扱う店を1996年から経営してきたとのこと。諸事情で八幡平市に移り、東日本大震災をきっかけに花巻に移住してきたのだそうだ。そんな中、吹張町の店舗付き住宅の売り物件を見つけて即購入。通りに面したガラスのショーウィンドゥを活かすべく、店を始めたらしい。
昔からアンティークや絵画が好きだったこともあり、少しずつ買い揃えてきた。それも保管する場所がなくなってきたため、ギャラリーオープンを考えたのだとか。店内にはピカソ、シーシキンの模写やシャガールのポスター、スペインの画家フェルミン・ペラエスやその妻テルミ・オダの創作絵画作品などが並ぶ。また入口横の棚には陶器や小物など、これまで小田さんが集めてこられたものなど、アンティーク雑貨も並んでいる。自らも花巻美術団体連絡協議会にも所属して絵を描き、またアンティーク収集を趣味とする小田さんの人となりがすべて並べられたギャラリーだ。
「今後はクラフト品などを並べて売る棚を貸したり、朗読会などを開催して、人が集まるコミュニティにしたいんですよ」と小田さんは話す。知人の全くいない花巻に移住してからも、どんどん人の中に入っていって友人を作るのが得意という小田さんだからこその発想だ。これまで苦労されてきたと聞いたが、いまここで落ち着いた生活を築きつつある。
「ムセオアカシア」とはマドリードの大通りに植えられた街路樹アカシアをイメージし、スペイン語で「アカシアの博物館」という意味なのだとか。夏のマドリードは気温が40度にもなるらしいが、このアカシアの街路樹が日陰を作って人を暑さから守っているのだとのこと。そんな店にしたいという小田さんの気持ちが垣間見える。ここ数年、ポツリポツリと新しい店が生まれつつある吹張町に、新たなオアシスができた。