岩手県花巻市、笹間の「盲清水」の言い伝えはご存知でしょうか?
鎌倉時代、是信房(ぜしんぼう)という親鸞の弟子のお坊さんが、東北地方へ浄土真宗の布教を命ぜられ従者とともに各地を巡っていました。
次はどこへ行こうかと相談していると、杖を持った盲目の老人に案内され、笹間にたどり着きました。
老人が「ここを拠点にすると良いですよ。」と地面に杖を突き刺すと清水が湧き出し、「盲清水」となりました。笹間のきれいな水はここ盲清水から湧き出たものだそうです。
笹間では「清水(しみず)」→「すんず」→「すず」と言葉が変化していき、「すずの」と言えば「清水の、きれいな水の」という意味だそうです。
本日は笹間できくらげ栽培を営む「すずのきくらげ」さんへのインタビューを紹介いたします。
きくらげってどうやって作るの?
きのこの栽培というと、私はシイタケの原木を想像していたのですが、すずのきくらげさんではおがくずのブロックで栽培しています。
様々な種類の木がブレンドされ、均一に成型されたブロックに菌を入れることで、安定した品質のきくらげができます。
ブロックはコンテナ内に並べられ、徹底した温度・湿度・CO2濃度の管理をされています。これらはスマートフォンから確認することができ、出先からでも各種の調整が可能になっているとのこと。空調が当たるところは乾燥しやすく、カサカサのきくらげになってしまうため、こまめなチェックが欠かせません。
コンテナやIT設備の導入はコストがかかりますが、天候の影響を受けないため農作業の難しい冬場でも、おいしいきくらげを作り、流通させることができます。一年中同じ品質で出荷できるというのはとても魅力的ですよね。
ブロックからきくらげの芽が出るまでおよそ1か月半、そこから収穫までは3~4週間かかり、5回程度繰り返し収穫できます。
盛岡と花巻で二拠点生活を送るすずのきくらげの岡田ユウタロウさん。
平日は盛岡市で会社員として農家を支えるお仕事をされています。週末は花巻市へ来て、生産・管理担当である叔父さんのお手伝いとしてきくらげコンテナのある笹間での作業や、卸先への配達をする生活。
なぜユウタロウさんは、きくらげを作ろうと決心したのでしょうか?
ユウタロウさんの叔父さんの伊藤カズナリさんはお米農家を生業としていますが、昨今の米価のことや多雪地帯である笹間で冬場のことを考えたときに、一年中できる何かをやりたいと考えていました。そこでユウタロウさんはきのこ類はどうだろう?と考え、情報収集をしていたところ、きくらげ栽培に出会ったそうです。
きくらげはビタミンDの含有量が食品の中でも豊富であり、美容にもよく、妊婦さんや子どもにも安心。ただ、国内での生きくらげの流通は非常に少なく、なかなか手に入りません。ちなみに、95%は中国産の乾燥きくらげだそうです。
このような様々な理由から、ユウタロウさんご自身のお仕事で得る農業に関する情報や知識を農業に繋げてみたかったことや、きくらげの栄養価が非常に高いと知ったことから、きくらげ栽培を始めました。
すずのきくらげさんの生きくらげはどんな味?
ぷりっぷりで、みずみずしく、でもしっかり歯ごたえはある。今までに食べたことのないような食感です。定番の炒め物はもちろん、軽く湯がいてポン酢を垂らして食べても美味しくいただけます。この美味しさは笹間の「すず」が美味しいから。たっぷり水を含んだ生きくらげだからこそ、きれいな水が大事になってきます。
現在、すずのきくらげさんの生きくらげは、通販・一部店舗での販売・飲食店のメニューなどで食べることができます。上記写真は花巻市諏訪町の洋食レストラン「HAIKARA-YA」さんのオムライスです。生きくらげが入ってきたときにだけ食べられる限定メニュー!インスタグラムで情報をご確認くださいね。
HAIKARA-YA インスタグラム
地方移住して農業を始めたい方へ、ユウタロウさんからメッセージ
『野菜は生き物と同じで、向き合った分だけ美味しく育ってくれます。暑くてしおれてしまったり、風が当たって乾いてしまったり、二酸化炭素が多くて呼吸ができなくなってしまったり。スタートは絶対赤字です。農業以外のことの知識もつけて、様々な角度から野菜たちと向き合ってみてください。』
すずのきくらげさん、ユウタロウさん、ありがとうございました。
花巻市実相寺にある『さくらぱん』さんというパン屋さんのレジ前にきくらげが売られていたことが、筆者とすずのきくらげさんの出会いでした。生きくらげを食べたこと自体が初めてでしたが、乾燥きくらげとはまた違った美味しさに感動しました。花巻の新たな名産として、ぜひ多くの方に召し上がっていただきたいです。
さくらぱん インスタグラム