2020年1月29日、花巻市のオリジナル婚姻届の完成発表が行われました。
全国の自治体や結婚情報誌などが、オリジナルデザインの婚姻届を提供しているのをご存知でしょうか。地域の様々な特徴をデザインに盛り込んだ、華やかな婚姻届がインターネットからダウンロードできたり、雑誌の付録としてついていたりします。
花巻市でも、結婚を祝福する婚姻届に地域のイメージをデザインしたい、そして花巻に愛着を持っていただきたいという想いで、オリジナル婚姻届を作成しました。
2019年6月に、「花巻市オリジナル婚姻届作成検討チーム」を発足。メンバーは、地域おこし協力隊の岡田芳美さん、塩野夕子さん、佐藤真衣子さんと、市役所の職員さんの4名でした。
それぞれのデザインにまつわる誕生秘話
まずは、オリジナル婚姻届のコンセプトについて、地域おこし協力隊の岡田さんと、市役所の職員さんにお話を伺います。
--オリジナル婚姻届の完成に至るまで、特に時間をかけたことはありますか。
岡田:まず、塩野さんと佐藤さんはイラストが得意なのでデザイン作成を、コンセプトやテーマなどのイメージや進行は、私と市役所の職員さんが担当しました。約9ヶ月間、花巻市のイメージをどう組み込んでいくか、花巻らしさとは何か、ということを考えるプロセスにじっくり時間をかけました。
--花巻には色々なイメージがありますね。宮沢賢治、温泉、神楽、鹿踊、ワインなどなど。婚姻届のイメージにするために色々な案が出されたと聞いています。
市役所職員:着目したのが、市の名前にもなっている「花」です。花巻市では、花巻ブルーというシリーズでリンドウ、カンパニュラなどを栽培したり、バラ園などもあります。市内では、アヤメの自生も見かけることから、デザインに使いました。そして花巻市の花は真っ白な「ハヤチネウスユキソウ」です。花はお祝いごとには欠かせないですし、結婚を決めたお二人が末長く幸せでいられますようにというメッセージにもなります。
そうしてハヤチネウスユキソウ、リンドウ、バラ、アヤメの4つの花が、婚姻届のメインデザインとして誕生しました。
イラストに込めた想い
次は、花巻市地域おこし協力隊の塩野さんと佐藤さんにデザインを考えた時のことを伺います。
——今回のデザインは「花」がメインテーマとのことでしたが、当初からそういった花巻市のイメージはご自身の中にありましたか。
佐藤:花巻なのでやっぱり最初は「花」が浮かびましたよね。
塩野:私は「ハヤチネウスユキソウ」が強くイメージとしてありました。市の花ということもありましたし、白くて星に似ている姿が可愛いなと思っていたので。真衣子さんもそうでしたよね。
佐藤:そうでしたね。そうしたら、全体的にイメージが大迫地域に寄ってしまって。なので、チームメンバーのみんなで花巻市のお花について情報を持ち寄ったんです。いや~、やはり若い女子が4人も集まると、出ますね~。お花の名前が…。
石鳥谷のリンドウ・東和のアヤメがここで登場しました。岡田さんから、”賢治の薔薇”という花があるぞという話をきいたときには、「さすが」としか言いようがありませんでしたね。
——なるほど。最初から4パターンだったのですか。
塩野:最初は和装と洋装の2パターンをひとつずつだったんです。私が和装、真衣子さんが洋装といった感じで。
——それぞれのイラストの持ち味がはっきりしていて、どちらも魅力的ですね。4パターンに増えたのはどういった経緯だったのでしょうか。
佐藤:単純に、「それぞれの和装と洋装バージョンも見てみたい」という話がチーム内で出まして。花のバリエーションも決めようという流れになりました。
塩野:まさか、全て採用になるとは思いませんでした。とても嬉しかったです。お互いが自分に無い魅力を持ったデザインだと感じていたので。
——塩野さんのデザインには「消しゴムはんこ」が使われているのだとか。
塩野:そうですね。当初は、真衣子さんと同じく絵として描いたものだったのですが。消しゴムはんこを12年くらい続けていまして、私自身はうまくデータが作れるか不安だったのですが、担当の職員の方や印刷会社の方々のお力もあり、はんこ独特の擦れまで本当に綺麗に作っていただきました。
——色のパーツがひとつひとつ分かれていたのですね。
塩野:そうなんです。手やほっぺなとの細いパーツまで全て分かれています。大変な作業でしたが、苦労の甲斐があって大満足のデザインが出来上がりました。
——ご自身で「ここにこだわった」という部分はありますか?
塩野:私のデザインは、花巻の伝統工芸である「花巻人形」をモチーフに考えました。ぽってりと丸みのあるフォルムと、花柄が体に描かれている事が特徴です。花巻の工芸品で一番最初に好きになったので、ぜひデザインに取り入れたいと思いました。上部に配置した帯は、日本の伝統柄をそれぞれの花に似たイメージのもので選びました。それぞれ、円満、調和、ご縁、お子様の健やかな成長への願いなどの意味が込められています。裏話ですが、和装の新郎は「宮沢賢治」、洋装の新婦は花巻市公認の地域キャラクター「フラワーロールちゃん」がモデルなんです。
——なるほど!確かに似ていますね。佐藤さんのデザインに対するこだわりを教えてください。
佐藤:私は、特に女性に喜んでもらいたかったので、”絵に描いたときに可愛いもの”ってなにかな~?と考えながら作成しました。そこで浮かんだものが、花巻のお花をはじめ、宮沢賢治の作品に出てくる動物たちや、きらめく銀河でした。それから、私自身が大迫地域でぶどうをつくっているので、ぶどうもしっかりと…。
塩野さんはカップルのイラストなのに真衣子さんは女性だけなの?と突っ込まれたので、
動物たちに無理矢理タキシードや紋付袴を着せたのですが、なかなかいい味出たのではないかと思います(笑)絵柄については、ちょっと自分の趣味に走りすぎたかもしれません…。
——「自分の趣味」とのことですが、真衣子さんのほうは少女漫画のような絵柄ですよね。
佐藤:今回、”婚姻届”という公的なもののデザインをするということだったので、さしさわりのない感じのものにしなきゃ…と思ったのですが、昔からさしさわりのないものをつくることが大の苦手なんです。実は、デザインの学校に通っていたことがあるのですが、白い部分は全て塗りつぶしたいタイプの人間なので、「シンプルで見やすくて誰にでもわかる」広告やデザインをつくることに耐えられず辞めました。
で、こう見えても少女漫画を読んで育ったせいか、昔からオリジナルの漫画を描くことが好きで、食や環境への不安が無くて一生平和な世の中であれば、今取り組んでいる農業ではなく、漫画家になりたかったんです。それもあり、お恥ずかしながら、自分の描く漫画みたいな絵のほうが好きなんです。なので、大変勝手ながら、自分が可愛いと思えるものを描かせてもらおうと思いました。
——お話を聞いていて、ご自身が好きな「花巻のイメージ」が、お二人のこだわりを軸に素敵に投影されているなと感じました。ありがとうございました。
今回ご紹介したデザインは、窓口配布または、花巻市のホームページからダウンロードして印刷し、全国の自治体で使う事ができます。花巻市にお住まいでなくても使うことができますので、花巻市出身で市外・県外にお住まいの方もぜひご利用ください。
【花巻市ホームページ・オリジナル婚姻届ダウンロードページ】
https://www.city.hanamaki.iwate.jp/kurashi/todokede/koseki/1011087.html