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お気に入りは十人十色!ソフトクリームやナポリカツだけじゃない豊富なメニュー
マルカンビル大食堂は全部で150種類以上のメニューがありますが、オープンにあたっては100種類ほどが復活しました。名物のナポリカツはオープン当日、13時半を過ぎても40分待ちという人気ぶりでしたが、いろいろな方にお話を聞くと、お気に入りメニューが違うことがわかりました。商店街の人たちやマルカン応援グッズの企画にかかわった方々に、再オープンについてコメントをもらうとともに、好きなメニューを教えていただきました。
マルカンビルから徒歩1分の場所にあり、喫茶コーナーや各種展示スペースを備えた「賢治の広場」店長の柴田悦子さん(写真上)のお気に入りは、冬はマルカンラーメン、夏はざるそばです。
「今回の再オープンは若い人のパワーに動かされましたね。これからも応援していきたいです。私は小さい頃からマルカンに通っていましたが、しばらく花巻を離れて海外で生活していまして、30年くらいぶりに食堂に行ったときに、昔見たおんなじ人がメイド服を着てウエイトレスをやっていたくらい(笑)、変わらない場所なんです。大食堂は見晴らしもいいので、海外のお友達をあそこに案内できるのもうれしいです。」
市内で新聞店を営む宮澤勝彦さん(写真上)の思い出メニューはブルーハワイ。緑色のソーダ水にアイスクリームがのったクリームソーダの、いわば青色版です。
実は宮澤さんはバンドマンであり、花巻のコミュニティFMでレギュラー番組を持つちょっとした有名人。マルカン応援ソング「マルカン・ブギ」を手掛けた方ですが、この曲は7年前には完成していたそうです。2016年2月に音源化し、偶然にもマルカン百貨店閉店発表の1週間ほど前からラジオで流していたところ、閉店のニュースも重なったことから注目度が増し、一躍有名になりました。
「マルカンは本当に再オープンできるのか、半信半疑でした。小友さんや高橋さんなど、今回のマルカン存続プロジェクトを機につながったり、交流を深めた人たちは多いです。これからが正念場だと思いますが、応援していきたいですね。」
マルカンビル存続によせて寄附付商品「マルカン応援ワイン」を企画・監修したのが松田宰(つかさ)さんです(写真上)。松田さんは盛岡市内でワインバーを経営するソムリエです。この日を待ちわびていたといい、味噌ラーメンとミニあんソフトを注文しました。
「(花巻市に隣接する)遠野市出身なんですが、この大食堂には昔から何度も通っていました。閉店を聞いた時は青春の一部が消えてしまうような思いがしましたね。580席という広い空間も貴重ですが、老若男女、世代を問わずみんなを笑顔にする、こんなにも愛されている場所はなかなかありません。花巻に留まらず、岩手の飲食業界にとって大事な財産だと思います。」
1階はセレクトショップをメインに据えて全面リニューアル
1階は女性に人気が出そうなファッションと雑貨のセレクトショップ「5th season(ファイブシーズン)」を中心に、全面リニューアルしました。1階フロア責任者の高橋久美子さんによると、アパレル、和雑貨、洋雑貨それぞれのジャンルに愛好家のスタッフやバイヤー経験者がおり、彼女たちの情報をもとに高橋さんが全国各地を飛び回って仕入れたものです。これからさらに品ぞろえを充実させていくそうですが、既に限定品の器やバッグなどもあり、女性たちが熱心に手に取っていました。
また、1階入り口付近は同じく高橋さんがオーナーを務める「Marble+」のカフェが入っており、通路を挟んで向かいにはイートインスペースもあります。近いうちに、立ち飲みができるバルスペースも設けられるそうです。大食堂だけでなく、立ち寄る楽しみが増えますね。
買ってくれた1000人がマルカン復活を後押し。マルカン思い出写真集
マルカン思い出写真集「MARUKAN IMAGES」を企画・編集したのがデザイナーの高橋菜摘さんと、編集者の北山公路さん(写真上)です。この写真集を買うと1冊につき800円が上町家守舎に寄付されます。初版で3,000冊を印刷し、既に1,000冊を販売しました。
北山さんは現在、マルカンビル再オープンまでの1年を綴った本を執筆中で5月に双葉社より発売予定です。写真撮影の際、笑顔をお願いしたところ、「笑顔どころかもう泣きそうなんですよ。」と感無量の面持ちで、再オープンを迎えた気持ちを話していただきました。
「レセプションに参加したんですが、そこに5万円以上の寄付者が招待されていました。5万円はけっこうな金額ですよね。きっとどこかの社長さんのような方が多いのかと思ったら、本当にごく普通の一般の方々だったんです。再オープンには、こういった、たくさんの顔の見えない方々の後押しがが大きかったと思います。みんなの力が集まらなければ、中心で動いていた小友さんや高橋さんも途中で諦めていたかもしれません。そんなことも思いながら行列をつくる皆さんの顔を見ると、涙が出ますね。」
続いて菜摘さんにも、これまでを振り返っていただきながら、お話を伺いました。
「閉店発表から再オープンまで、丸一年は経っていないんですよね。上町家守舎は本当にすごいスピードでやり遂げたという印象があります。そして、花巻市民が動いただけでなく、マルカンファンみんなの力で復活させたという感じがしています。この寄附付写真集は、マルカンのために何かしたいという方々の思いを集めて、形にしたものです。写真集といってもデジタルではなくて、押し入れからひっぱり出してきて、家族団らんの場で見てもらえるような、そういうものにしたかったし、マルカンを知らない人にもここがどういう場所だったかを伝える内容にできたらと思ってつくりました。写真集は(現時点で)全国各地の1000人の方に購入してもらっていて、それはそのままマルカン再生につながっています。本当にたくさんの方からマルカンに対する思い出コメントや応援をいただきました。存続プロジェクトにこういう形で関われて、本当によかったと思っています。」
新生・マルカンビルはお客様とともに、10年、20年と続く空間に育てたい
マルカンビル存続に向けて動いた花巻家守舎・上町家守舎で代表を務める小友さんですが、オープニングセレモニーの挨拶では緊張されていたようです。やはり初日は特別だったのでしょうか。
「再オープンは、マルカンのことが大好きな人たちが行動してくれたからこそ実現したと思っています。レセプションやオープンだからといって、(上町家守舎の代表である)自分が食堂でお客様を出迎えていても、自分のことを知っている人は10人にひとりもいません。皆さんはマルカンが好きだから、足を運んでくれる。そんなマルカンファンの方々が、寒い中、外で並んでくれて、自分がその人たちのためにドアを開ける。その人たちを目の前にして、どんな挨拶をするのがいいか、かけられる言葉はあるのかと考えた時、少し緊張しましたね。」
オープニングセレモニーでは、再オープンは通過点であり、これから皆さんと新しい空間をつくっていきたいと話した小友さん。今後、利用者を増やしていくためにどのような企画を考えているのでしょうか。
「まずは今までの味、雰囲気、空間を守って伝えることですね。新人スタッフもいますから、今までと変わらないものを提供していける体制づくりにも力を入れていき、メニューの数も徐々に元に戻して増やします。先日のイベントで、この大食堂をライブや寄席の会場として使いましたが、今後も、こういった会場提供はサービスのひとつとして検討しています。大食堂ではFree Wi-fiも使えますので、ビジネスシーンでの利用促進も考えています。」
最後に、小友さんおすすめのマルカンビル大食堂の楽しみ方を紹介いただきました。
「まだ来たことがない方には、ぜひ土日昼間の大食堂を見ていただきたいですね。赤ちゃんから100歳近い人まで、老若男女が集まって食事をしている光景が見られる空間はなかなかないと思います。花巻にはわんこそばができる蕎麦屋がありますが、わんこそばの後でマルカンソフトというのが、友人を花巻に連れてきた時の定番コースです。」
小友さんによると、別の場所で食事をした後でも気軽に立ち寄って食べられるのが、マルカンソフトクリームのいいところだそうです。通になると、お箸でグラスに取り分けてシェアすることもあるとか。ちなみに小友さんのお気に入りメニューは、めかぶそば。こちらもぜひ試してみてくださいね。