まきまき花巻味わいたい花巻で作っています。 出店でしか会えない、レア&気さくなワカメ屋さん。
花巻で作っています。 出店でしか会えない、レア&気さくなワカメ屋さん。
23 まき
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陸中海産との出会い

初めてこもれびマルシェへ行ったときのことです。たくさん並ぶ、新鮮な朝採れ野菜や果物、おいしそうなお総菜に焼き菓子――とてもワクワクしました。ところがわたしの心が一瞬で奪われたのは、「わかめ」と書かれた渋い提灯でした。

沿岸出身のわたしにとって、わかめはとても身近な食べ物。塩蔵わかめは常に冷蔵庫にあり、養殖業を営んでいる親戚もいます。しかしここは海から遠い内陸の地、花巻。なぜ海藻が…?好奇心を抑えられず提灯へ近づいてみると、気さくなご夫婦が丁寧に、商品の説明をしてくれました。購入してみると、やはりパッケージの製造元は花巻。肝心の商品のわかめは、とてもいい香り。ずいぶん海産物は食べきたと自負していますが、乾燥わかめがこんなにおいしいとは。それから何度か購入し、我が家ではすっかり常備食材です。先日ついに、思い切って取材のお願いをしました。

 

お話をお聞きしたのは現代表の堀内雄輔さんと由樹子さんご夫妻。

お忙しい作業の合間にお邪魔しました。


まずはなぜ、内陸でワカメ業を…?

創業は45年ほど前。宮古市の出身だった雄輔さんの祖父・良司さんが、地元のつてで仕入れた新巻鮭を、花巻駅前で売り始めたのが始まりだそう。「キオスクの横に、ブルーシートを広げて鮭を並べて。今じゃ考えられない、ストリート販売です。志戸平遊楽園がまだギリギリ営業していた頃でした。」(雄輔さん) 花巻駅を利用する観光客も、今よりずっと多かったのだとか。ただ荒巻鮭は持ち歩くのも少々大変で、冬しか売ることができません。そこで加工して年中売ることのできる、わかめにシフトチェンジ。持ち運びも手軽で、旨味と風味が増した乾燥わかめは、お客さま達にとても喜ばれたそう。さらにリピーターにも対応できるよう、当時はとても珍しかった通信販売を取り入れました。「それがすごくバズったんです(笑)。おいしいわかめが手軽に食べられると、まず県外や都会の方で受け入れられて、100袋単位で注文が入るようになりました。」(雄輔さん) 製造や発送で大忙しになり、駅前での販売はやめ、通信販売に絞りました。ちなみに材料のわかめは今、釜石の唐丹漁協から仕入れています。

 

三代目からの新しい試み

現代表、雄輔さんは三代目。家業を継ぐことに抵抗はありませんでしたか?思春期の頃とか。「子どもの頃、両親は忙しかったので祖父母が面倒を見てくれました。幼い頃から、お前は長男だからウチを継ぐのはお前だぞ、と半ば洗脳されて育ったので(笑)特に抵抗はありませんでした。なんとなく自分でも“オレだよなあ”って。」(雄輔さん)高校卒業後、マーケティングなどを学ぶ専門学校に入学し、その後花巻へ帰郷。いくつかの職場を経験し、当時の社長だった良司さんの許可を得て入社しました。

その後由樹子さんとご結婚。盛岡出身の由樹子さんは「結婚する前に初めてここのわかめを貰って食べたときは、それはもう本当においしくて!びっくりしました。」と教えてくれました。

入社したばかりの頃は、初代の頃からの顧客さま達の注文もあり、売り上げは維持できていたそう。けれどお客さまたちも高齢になり家庭の世代交代もあって、ご案内の葉書が戻ってくることも増えてきました。「祖父が作った礎を父が維持をしてくれて、自分に出来ることを考えました。それで違う方向性も取り入れてみようと。それまで100個をひとりのお客さまに発送していたけれど、100人の方に1個買って貰おうと思ったのです。」(雄輔さん) 友人からのアドバイスもあって、まずは県内のお客さんも開拓しよう!とイベントでの出店を始めました。

最初は出店募集をしているクラフト系のイベントなどに、自分たちで申し込みをしていました。「イベント出店自体がどんなものかも分からなかったので、まずは雰囲気などつかむために。続けていけるのかなってなにもかも手探りでした。10年ほど前です。」(由樹子さん)それから趣味で参加していた、アウトドアイベントなどからも出店を誘われるようになり、今では県外からもお声が掛かったりするのだとか。

レイアウトも渋くてかっこいいのです。

我が家でも愛用している“ワンタッチこなわかめ”ができたのは、お客さまからの要望だったそうです。「創業当時から買ってくださっているお客さまが、ご高齢で噛み切れなくなってきたので、もう少し小さく食べやすいものがあったらいいなと教えてくれました。」(由樹子さん) 

こちら我が家の朝ごはんの定番おにぎり。とにかく細かいので消化にも優しく、小さいお子さんにもおすすめです。

ほかにも「名刺代わりに配れるサイズのものがあるといいな」と友人のデザイナーさんに相談し、こなわかめの極小サイズが誕生。「キャンプに持って行くにも便利だし、せっかくだから販売しよう!と商品化しました。手に取りやすいサイズとお値段設定です。」(雄輔さん)

一番手前が名刺サイズのこなわかめ。 税込み350円。

一方で、あえて変えない部分も。一番の人気で定番の商品“ワンタッチわかめ”は、創業当時からパッケージを変えず、大切に守り続けています。

そのまま食べられるワンタッチわかめ。 税込み690円。

もっと気軽に買いたい!けれど…

手軽に食べられて便利な陸中海産のわかめ。ですが、イベント以外で買えないのは残念な気も…委託販売などはしないのですか?「わかめはとにかく太陽や蛍光灯など、光に弱い。光に当たると変色して、風味も落ちてしまいます。だからしっかり管理してくれる、信頼のできるお店にしかお願いしていません。」(雄輔さん)なるほど!矜恃を感じる理由は、とてもかっこよく感じました。ちなみに花巻市内では、上小舟渡の「おいものせなか」(0198-22-7291)で購入できるそうです。

 

来年へ向けて

ブログを遡ると、来年で“ワンタッチわかめ”は40周年だとか。なにか限定グッズやイベントなど、考えていたりしますか?

「正直に言うと、今気づきました(笑)言ってもらわなかったら、気づかなかったかもしれません。」(由樹子さん)「来年1年を通じてなにかおもしろい事ができればいいなと、今思いました(笑)これから考えます!」(雄輔さん)

イベント出店なども一旦落着く冬のあいだや年末年始も、お歳暮や贈答用の製造と発送でお忙しいのだそう。直接お会いできないのは残念ですが、40周年のわかめ祭り(仮)もとても楽しみです。

個人的オススメ

左「ワンタッチこなわかめ」税込み690円。小さいお子さんがいるご家庭にも是非!原材料ワカメのみ、無添加で塩分も安心です。

中「がごめっ粉」税込み590円。粘るがごめ昆布を粉にしたもの。雄輔さんに教わって、納豆に混ぜてます。粘りと旨味が増します。

右「ワンタッチひとくきわかめ」税込590円。水で5分ほど戻すだけ、とても簡単にコリコリの茎わかめになります。定番の麺類のトッピングや、炒めたりぽん酢に漬けておくだけでも◎。

茎からもいいお出汁がでますよ~

取材を終えて

まずは取材を快諾してくださり、お時間を作ってくれた雄輔さんと由樹子さんにとても感謝です。お話が楽しくてつい脱線してしまい、我に返り戻すのに必死でした。沿岸出身者の単純な好奇心で引き寄せられた陸中海産。しかしそのルーツや商品の背景を知ると、親近感も相まってわかめのおいしさも増すように思いました。

次回の出店は9月22日の日曜日のこもれびマルシェ高源上町ビルにて8時から11時の開催です。由樹子さんが担当しているSNSでは、県内外の出店情報やレシピなども掲載されています。そちらも是非ご覧ください。

 

私が書きました
くまがい ひろみ

釜石市出身です。
花巻の前は秋田、その前は遠野に住んでいました。
今は花巻に骨を埋めるつもりです。
好奇心が旺盛で、美味しいものに目がありません。
男の子のお母さんです。