宮沢賢治童話村近くにその陶芸工房はある。山菜も採れ、様々な動物も現れそうな森の中の、山小屋風の建物だが、隣接する人気の山小屋カフェKURAKAKEのお客様が多いので、天気の良い週末はたくさんの人が訪れる一角だ。手作りの「週末陶芸家」が背景の緑に映えている。
フジサキウサジとは、この工房を経営するご夫妻2人の氏名を組み合わせた名前。お2人ともまだ陶芸を始めて4年とのこと。2014年3月、用事があって栃木県を訪れた2人は、ついでに益子に立ち寄り、陶器市を見学。それが製陶へののきっかけになったそうだ。帰ってきてすぐに陶芸教室に通うことになり、それから2年半、粘土の成形のみならず釉薬の扱いから窯の管理まで経験した。その間、作り続けてきた作品が自宅の食器棚から溢れるようになり、処分を兼ねて自分たちの作品を土沢アートクラフトへ出品。それなりに売れたこともあり、何でもとことん突き詰める2人の性格も相まってますます作陶活動に拍車がかかった。
陶芸教室を卒業したあと、さまざまな窯元を覗いて見ながら、自分たちの窯や工房が欲しいと、半年かけてあちらこちら場所を探していた時に出会ったのがこの場所。交渉の末元々自分でも作陶していたオーナーから今の工房とギャラリーを借り、特にギャラリーは昨年から2人でこつこつリノベーションを続けてきた。今ではギャラリーだけでなく、居心地の良いリビングのような場所になって来館者を迎えている。「そのうち泊まれるようにできるといいなぁ」と、リノベーションはまだまだ続くようだ。
「週末陶芸家」を名乗り、本業の仕事の合間に自分たちの作品を作ってきた2人は、現在会員を募って「会員制陶芸工房」を運営すると同時に、週末陶芸体験コースも主宰している。家族連れやカップルが仲良く作品を作っている姿はとても微笑ましい光景だ。
電気窯で作品を仕上げるには、窯に火を入れてから12〜14時間かかる。自分たちの作品や会員、体験コースの方々の作品を焼き上げるために、仕事が休みの週末は朝早くから、時には夜を徹して窯を見守る。それでもお2人の顔には大変そうな表情はない。良い人生を送っているという柔らかい笑顔が印象的だった。決して構えることのない、気さくな2人の人柄に触れながら、秋の週末陶芸体験はどうだろうか。