まきまき花巻見たい時代の流れにあらがってでも残したいもの~株式会社 小彌太~
時代の流れにあらがってでも残したいもの~株式会社 小彌太~
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 花巻の閑静な住宅地にある、株式会社 小彌太。ここは染物を生業として代々受け継がれてきた老舗なのですが、なんと創業は江戸時代なのです。

 江戸・天明元年(1781年)に初代の方が現在地に業を起こされました。江戸時代は、ひとりひとりが生業を持っていて、誇りを持って生きていた時代だったと聞いたことがあります。大切に守り続けてきた歴史ある会社です。

 

 

 現在の代表取締役社長は、9代目の小瀬川弘樹さん。花巻で生まれ、高校時代まで地元で育ちました。その後東京の大学に通い、就職をして宮城県仙台市の会社に勤めたそうです。その後、専務である弘樹さんの叔母様から「帰ってきてほしい」との再三のご説得があり、25年ほど前に故郷花巻に戻られました。「そろそろ戻ってきてくれるかもしれない」というご親族の想いを感じたそうです。

 

 昭和55年に新たに機械が導入され、スクリーン印刷・捺染といった部門が飛躍しはじめます。正確さと速さが加わったことにより、品目数も大幅に増えました。

 現在は、お仕事の半分が選挙のご依頼で占めており、その内容は、ポスターやたすき、掲示板や必要書類など多岐にわたります。他にも、行政や団体の依頼を受け、旗、袢纏、暖簾、のぼり旗などを制作しています。

 まちを歩いていると、こういった物を見ても何気なく通り過ぎてしまいますが、情熱をもった方が作っているのだなと思うようになりました。

 

 

 

 花巻の伝統芸能である神楽や鹿踊の衣装、神楽幕を作るお仕事もあると聞き驚きました。花巻で必要なものを花巻で作るということは、シンプルですがとても大事なことだと思います。

 

「小彌太は歴史のある会社ですが、その製法は時代によって変化していくことが求められています」

と、小瀬川社長は語ります。

 

「一部、機械に頼る部分もありますが、作業のほとんどは型を作り、手作業で真心を込めて仕上げています。日常で使うものを、細々とでもしっかりとお客様へお届けすることが、現在のこの会社のやり方です。

 最近は、ボタンひとつから何でもできてしまう時代です。しかし、時には時代にあらがってでも、日本が誇る昔ながらの技術をつないで、残していくことが大切なんです。」

と仰っていたことが、とても印象的でした。

 伝統を守りつつも、求められているものが何なのかしっかりと見つめ、工夫をして進化していくことが、今の時代のものづくりなんですね。

 

私が書きました
塩野 夕子

2018年9月、宮沢賢治が好きすぎて埼玉県から移住してきました。
まきまき花巻編集部と市民ライターの二足のわらじで活動しています。
現在は宮沢賢治記念館に勤めながら、大迫町の早池峰と賢治の展示館・2階にある「賢治文庫」も管理しています。