小説家・劇作家の故:井上ひさし氏は小学五年の時、宮沢賢治童話『注文の多い料理店』や『どんぐりと山猫』を読んで宮沢賢治大好き人間の病に(?)感染して、青春時代を過ごしていたらしい。
井上氏は、若かりし頃、釜石市にある、国立療養所の職員となりその野球クラブに投手として所属。昭和29年頃、岩手県内国立療養所野球大会が花巻市で開催された際に、花巻を訪れた。
詳細は井上ひさし著『宮澤賢治に聞く』に書かれてあるが。この時、宿泊所となったのが花巻療養所内の空(から)社宅(試合も同所グラウンド)。
その日井上氏は朝食後、腹ごなしに散歩に出かけることにした。出がけにたまたま療養所の正門に掲げてあった住所表示を見てびっくり、花巻市下根子とあったのだ。
宮沢賢治の、あの下根子とはここだったのか!「賢治が眺め暮らした下根子の風景を今、俺がこうして眺めている」 そう大感激した井上氏は野球大会の試合など、そっち退けでエデンの東ならぬ宮沢賢治の聖地を目指し東へ東へとさまよい歩いたとか。
お昼頃、療養所に戻った時には既に野球の試合は終わっていて、あろうことかエースの井上氏がいなくてもチームは立派に勝っていたという落ちが付く。