東和町の自然豊かな丘の上に、一軒のお菓子屋さんがあります。お店の名前は、『PATISSERIE 菓音』。お『菓』子の『音』と書いて、『カノン』です。オーナーは、横浜出身の下坂紀明(しもさか のりあき)さん。この地でお店を開くことにした経緯と、地元の印象を中心にお話を伺ってきました。
ここは自分が表現できる土地
下坂さんがパティスリー菓音を開業したのは、2013年の4月。初めは独立を決めたものの、どこに出店をしようか迷った、と言います。
「当時は子育ての都合もあり、夫婦どちらかの実家の近くで開業したいと考えていました。しかし、私の実家がある関東はスイーツの激戦区。店数が多い土地で出店をしてもすぐ埋もれてしまい、自分の作りたい・表現したいものを作っていくのは難しい、と考えました。」
この建物は元々、奥様の実家が所有していた土地に建つ、和菓子屋の工場をリフォームしたものだそうです。
「菓子工場ならば洋菓子用に改築すれば使えるものもあるだろうし、奥さんの実家も近いという事で、この地で開業することに決めました。関東から来たばかりの頃は、人も車も少ないし、何も無くて寂しい所だなあ…なんて思っていましたよ(笑)」
安心できるものは、親しみある地元の素材で作ったもの
「私はなるべく、地元の素材を使うことにしているんです。」
菓音で使用している素材の多くは県内産、ことに花巻のものが多く使用されています。
「口にしたときに安心できるものは、地元の人に親しみのある素材で作ったものだというのが、私の考えだからです。」と、真剣に語る下坂さん。しかし、産地によって特徴が違う素材を使うのは苦労も多く、最初は試作、試作の繰り返しで、自分の納得のいく配合に行き着くまでに半年もかかったそうです。
花巻で開業して4年。現在では関東より、時間の流れがゆっくりしている花巻の方が落ち着くのだとか。
「花巻の人は社交的で、温かいと思いますね。時々素材を持ってきてくれたりもするんですよ。関東へは仕事でたまに行きますが、時間に追われてせわしなく感じてしまって、すぐに疲れてしまうんです。あー早く東和町に帰りたいなあ、なんて思ったりしますね(笑)」
今後は「関東で学んだやり方を岩手風にアレンジして、店を作り込んでいきたい」と語る下坂さん。
ゆっくりと流れる、豊かな時間を過ごしたくなったとき、『PATISSERIE 菓音』へ訪れてみてはどうですか?人の温かさを感じる、優しいスイーツが迎えてくれますよ。