まきまき花巻行きたい~歴史を紡ぐ~賢治ゆかりの花壇・旧橋本家別邸「茶寮かだん」
~歴史を紡ぐ~賢治ゆかりの花壇・旧橋本家別邸「茶寮かだん」
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2019年に「まきまき花巻」のワークショップで千葉さんと出会い、その時に「茶寮かだん」さんが素敵な場所ですよねと話がはずみました。そして、おひな様が見られる時期に行ってきました。

ひな祭りも近づいた2月29日に花巻駅で待ち合わせ。駅から歩いて10分ほどで花巻市役所。そこから南への路地、通称「ひゃっこ坂」を下る途中、右手に石の塀が続く趣のある建物が見えてきます。


 さっそく門をくぐって、玄関へ。

ここは、岩手県内随一といわれるほどの呉服店を営んでいた旧橋本家別邸。
宮沢賢治の又いとこにあたる3代目喜助氏が、病弱だった夫人トシさんのために約3年の歳月をかけて昭和2年に完成した建物です。また、斜面を生かした庭園には、宮沢賢治が設計し造った花壇がほとんどそのまま残されています。


別邸は、平成に入ると持ち主も変わり、住む人もいなくなり、東日本大震災後5年間は空き家になってしまい、建物が見えなくなるほど草木が茂っていたそうです。
その状態で別邸を譲り受け、オーナーとなった一ノ倉さんご夫妻が貴重な建物を復元し後世に残そうと考えました。家族や大工さんたちの力を借りて、一年半の歳月をかけて見事に改修しました。

 

邸内にはレトロでモダンな洋間・和室、茶室まであります。この日も遠くから訪れる人や地元の人が花巻人形のひな壇を鑑賞したり、ランチやお茶を楽しんでいたりしました。

▲玄関のそばにはモダンな洋間

▲解放感のある和室

▲洗面所のガラス窓にも細かな細工。

▲繊細な職人技が施された書院障子には、三保の松原と富士山


3月はひな祭り。
 ひな人形と花巻人形がずらりと並びます。
驚いたことに宮沢賢治さんと妹のトシさんゆかりの花巻人形のおひな様もありました。他にもたくさんのお人形がお出迎えしてくれました。

▲右側が賢治さんと妹のトシさんが子供の頃に遊んだという雛人形です。(左側にもたくさんの花巻人形が並んでいました。)

このおひな様のお顔がなんとも愛らしくて、和みます。

 

 

「茶寮かだん」では、こだわりの焙煎豆を使いハンドドリップで丁寧にいれるコーヒーや抹茶と和菓子、賢治さんも好きだったサイダーなどもありました。コーヒーのお水は早池峰霊水を使われていて、とってもまろやかな味わいでおいしいのです。

▲コーヒー(グアテマラ)500円(お菓子付き)

ランチ定食は花巻産の食材を中心とした日替わりメニュー。
奥様とお母様が、毎朝5時前から仕込みを始めるそうです。手間暇かけて愛情たっぷりのお料理はどれも絶品です。ランチ定食は数量限定のため、事前の予約をおすすめします。

邸内を見て思ったのは「ここまで復元するのは、大変な苦労があったのではないか?」ということでした。

一ノ倉さんに尋ねてみました。
 「管理に手が届かなくなっていた別邸の地主さんから『大切にしてくれる人に任せたい』と見込まれてしまいました。花巻に、別に新しいものを作るわけではなく、せっかく素晴らしいものがあるので、なんとか存続したいと思ったのです。生い茂る草木の中を邸内に入ると約90年前の見事な柱や天井の木材、白壁、細工の素晴らしいガラス窓などがあり、私も大工さんも驚きました。これは、とにかく復元して今後に残していきたいと思いました。」


「宮沢賢治さんの花壇もあると聞いていましたが、草木を取り除いて全体が見えた時には感激しましたよ。 皆さんが訪れ、喜んでくださるのが一番嬉しいですね。やって良かったかなと思っています。」

▲貴重な深緑色の瓦屋根

改修作業は、当時の珍しい深緑色の瓦や古いガラスをとり揃えることや刈り取りした草木を軽トラックで100回以上も往復して処理するなどの様々な苦労があったはずですが、一ノ倉夫妻は、昔話でもするように笑って話します。


そして、3年半前の2016年9月1日に「茶寮かだん」としてオープンしました。
一ノ倉さんの特にお気に入りの場所は、縁側と奥の窓ガラスに囲まれた部屋だそうです。窓ガラスは、息をのむほどの美しさ。私たちもしばらく見入ってしまいました。
近づいてみると美しいガラス一枚一枚に模様が刻まれています。

▲オーナーの一ノ倉さんのお気に入りの部屋

▲近づくと雪の結晶のような模様

▲素敵な笑顔で丁寧に、お見送りまでしてくれた御夫妻

取材を終えて、居心地のいい空間とお二人のおもてなしに心も満たされました。 

▲南斜面の花壇。今では、どこにでも花壇はありますが、当時は「花壇」そのものが大変珍しかったようです。(この写真は2019年3月撮影)

次は、外に出て庭園を歩いて見ました。
茶寮かだんには、賢治さんが晩年に設計した花壇があります。
この南斜花壇は賢治さんが手がけた最後の造園だったのではないかとの話があり、斜面を生かしたとてもモダンな花壇だとも言われています。

約90年の時を経ても、当時の形の花壇が仕切りのレンガもそのままで、賢治さんの世界に触れることができる特別な空間です。賢治さんも花の種などを持ってよく訪れ縁側に座っていたそうです。

▲模様が入っているレンガ

 

 帰り道、私が、
「昭和初期の面影が残る木やガラスが、長い年月をこえて息を吹き返していて素晴らしいことですね。別邸を見て、日本建築の素晴らしさを改めて知りました。ゆっくりとお茶もいただきあまりにも居心地が良いので、なかなか立ち上がれませんでした。」
 と感想を話すと千葉さんも
「全国から建材を取り寄せたり、3年もの時間をかけたりと病弱だった奥様のためだけに、ぜいを尽くすとは、すごいと思いました。また来たいですね。」
そんなことを話しながら取材を終えました。

当時の花巻の豪商は、細部まで凝った粋で素晴らしい建物を建築できる豊かな経済力がありました。また、野放しにされていた建物を引受け、見事に復元する人が今の花巻にもいました。「街は、生きていて、暮らす人々が繋ぎ、そして創っていく」ものだと思いました。
皆様も旧橋本家別邸「茶寮かだん」を訪ねてみてはいかがでしょうか。

※おひな様は3月18日迄展示する予定です。

※今回の記事はまきまき花巻ライターの千葉芳幸と飛世かおりで共同制作しました。

私が書きました
飛世かおり

2018年8月より、花巻市地域おこし協力隊に着任、花巻ワインPR担当。
豊かな自然が広がる花巻で、大きな愛情を注がれたブドウを使い、花巻で作ったワイン「花巻ワイン」をPR活動中。
好きな作家は小川糸さん。