まきまき花巻見たい光と自然が共鳴する空間〜宮沢賢治童話村の森ライトアップ2019〜
光と自然が共鳴する空間〜宮沢賢治童話村の森ライトアップ2019〜
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 2019年7月27日、今年で4年目となる「宮沢賢治童話村の森ライトアップ2019」が開催されました。

 今回は、このライトアップに熱い想いを持って花巻に来てくださった、東京のポップスバンドBlueHairsとミラーボーラーズ株式会社のご紹介、自身が感じた童話村のライトアップの魅力をお伝えします。

 

花巻の魅力を音楽で発信

 オープニングイベントとして行われた、花巻市とコラボプロモーションを行っている東京のポップスバンドBlue Hairsの生ライブ。彼らのプロジェクトの第一弾として作られた「星の涙 月の祈り」という曲は、宮沢賢治の「銀河鉄道の夜」がモチーフとなっています。美しい自然に囲まれたこの場所で、軽快なアップテンポのメロディーが響き渡り、周りからは手拍子が湧きました。

 彼らが花巻を選んでくれたことを心から嬉しく思います。音楽を心から愛していることがじんわりと伝わってきました。この機会を逃してしまった方は、イーハトーブ音楽祭2019にぜひお越しになって、生でBlue Hairsの音楽に触れてみてください。

イーハトーブ音楽祭公式ホームページ

http://ihatov.main.jp/m-fes/2019timetable.html

 

光と幻想の世界へ

 宮沢賢治童話村の森ライトアップの設営を手がけているのが、ミラーボーラーズ株式会社。 グラフィックデザイナー、写真、照明技師など、全国に30人ほどのメンバーを持つアート集団です。

    今回は、家元の打越俊明さんにお会いしてきました。

 打越さんは、元々グラフィックデザインのお仕事をされていました。2000年の冬のある朝、自分が今生きている世界の美しさ、命の素晴らしさに気づき、涙を流したことがあったそうです。そのイメージを表現するために様々な模索をなさった末に待っていたのが、ミラーボールとの出会いでした。数百個のミラーボールを使って、「宇宙と和式美」をテーマに光と乱反射の空間世界を作り出します。

 花巻市の宮沢賢治童話村のライトアップは今年で4年目。今回は新しい作品も加わっての設置です。毎年同じ作品を展示しているものもありますが、少しずつ部分的で小規模な変更を施すなどの工夫を行なっています。

 

▲今年はどんぐりの中も変わりましたが、蓮の花の形もその年によって違います。みなさんお気づきでしたか?

 

 童話村のある胡四王山は、豊かな自然があります。水が流れていて、林があり、大きな空があり、太陽の光がある。「ミラーボーラーの作品を表現する上で最適な場所」なのだそうです。

 それというのも、この光の空間は、有機的なもので「生き物」のようなものだといいます。光を乱反射して屈折していく姿は予測ができません。自然の中にあることで、風が吹き、木の葉が揺れ、光が不規則に動きます。また、雨の中の潤んだ光や、地面に映る光景は息をのむ美しさです。

 そして人の心はそれ以上に複雑で、その時の気持ちで何通りもの感じ方がある。だからこそテーマを決めつけずに、ひとりひとりが思ったことを大切にしてほしいと、打越さんは語ります。

 「美しいと感じる」ことは、言語や国籍、障がいの壁も超えて、誰にでも等しいものです。ミラーボーラーが目指すものは、「世界平和」。作品世界を通して、地球に存在する様々な美しさを伝えたいという想いを感じました。

 

手伝わせてください!!

 実はこのインタビューの後、すっかりミラーボーラーズの方たちの考えに共感した私は、思い切って

「ライトアップの設置をお手伝いさせてもらえませんか!」

と、頼み込みました。ドキドキしながらお返事を待っていると、

「ぜひお願いします。花巻の方と一緒に作り上げることができることが嬉しいです。」

なんと、快く承諾してくださいました。

▲毎年細部に至るまでしっかりと確認しながら組み上げ、安全にも気を配ります。

▲松の木の高い部分にミラーボールを取り付けます。

▲デリケートな作品を、慎重に組み上げていきます。

 

▲時には息抜きも。

 ライトアップに向けて、暑い中本当に真剣に作り上げてくださいました。少しの時間ですがお手伝いができ、それがライトアップで輝きを放っている姿を見て胸が熱くなりました。

 

それぞれの賢治さん

 10年間、宮沢賢治さんが大好きで花巻に移住した私も、この童話の森ライトアップを見て、色々なことを感じました。中でも「この場所は、こんな作品が想像できるな」と自身が思ったことを、賢治さんの童話にのせてご紹介します。

 

 そのときはもう、あたりはとっぷりくらくなって西の地平線の上が古い池の水あかりのように青くひかるきり、そこらの草も青黝(あおぐろ)くかわっていました。

「おや、つめくさのあかりがついたよ。」ファゼーロが叫びました。
 なるほど向うの黒い草むらのなかに小さな円いぼんぼりのような白いつめくさの花があっちにもこっちにもならび、そこらはむっとした蜂蜜のかおりでいっぱいでした。

「ポラーノの広場」より

 

▲今年から新たに加わった作品です。ツメクサの明かりは、まるで呼吸をしているかのように点滅をします。

▲上の写真の手前の作品には、風の又三郎のモチーフが使われています。

▲こちらは鹿踊のはじまり。どちらも打越さんのデザインです。

 

 空が夕焼けに染まり始めた頃、うすむらさきの空に突然虹が現れました。

 

「虹はいったいどこへ行ったろうね」

「さあ」

「あ、あすこにいる。あすこにいる。あんな遠くにいるんだよ」

 大臣の子はそっちを見ました。まっ黒な森の向こう側から、虹は空高く大きく夢の橋をかけていたのでした。

「十力の金剛石」より

 妖精の小径には、まるで宝石の国に来たような錯覚をするほど美しい光景が広がっていました。

 

その十力の金剛石こそは、露でした。

「十力の金剛石」より

 

「さあもう支度はいいんですか。じきサウザンクロスですから。」

 ああそのときでした。見えない天の川のずうっと川下に青や橙やもうあらゆる光でちりばめられた十字架がまるで一本の木という風に川の中から立ってかがやきその上には青じろい雲がまるい環になって後光のようにかかっているのでした。

「銀河鉄道の夜」より

 

▲木漏れ日が反射してまるで虹のようです。今年も百合が美しく咲き誇っています。

    

 これはあくまでも私の感じた世界のほんの一部です。

 ぜひみなさんも、宮沢賢治童話村の森ライトアップへお越しになって、ご自身の心で感じてみてください。昼と夜の両方で楽しむことをおすすめします。

 今年は、2019年11月10日(日)まで開催されています。また、ライトアップは点灯される日が決まっています。詳しくは花巻市ホームページをご覧ください。

〈参考文献〉

宮沢賢治全集(ちくま文庫)

ポラーノの広場

十力の金剛石

銀河鉄道の夜

私が書きました
塩野 夕子

2018年9月、宮沢賢治が好きすぎて埼玉県から移住してきました。
まきまき花巻編集部と市民ライターの二足のわらじで活動しています。
現在は宮沢賢治記念館に勤めながら、大迫町の早池峰と賢治の展示館・2階にある「賢治文庫」も管理しています。