1回あたり3万人もの人を集める土澤アートクラフトフェアは、春と秋に開催されるイベントとしてすっかり定着。この春も5月3日(金・祝)〜4日(土)の2日間開催される。
このアートクラフトは岩手県外からも多数の出店者がいて、お客様も遠路やってくるほどの盛況ぶりだ。聞けば出店希望者が募集数をはるかに上回っており、事務局がセレクトするのも一苦労とのこと。このアートクラフトフェアの前身といえるのは、2005年に始まった街かど美術館だった。
2000年に東和町に移住した彫刻家菅沼緑(ろく)さんと萬鉄五郎記念美術館が提唱し、画家萬鉄五郎の生誕地として知られる土沢で、全国でも数少ない芸術家の発表の場として始まった街かど美術館。市民による手作り開催だったのだが、全国から芸術家たちを集めたその運営は、大変な労力を要したことから、数年に一度開催することとなった。その合間の年に行ったのが土澤アートクラフトフェアだったとのこと。最近では芸術家よりもクラフト作家が多くなり、開催も年1回から2回となって現在に至っている。
街かど美術館や土澤アートクラフトフェアで「アートのまち」として知られるようになった東和町だが、イベントの時以外の土沢商店街は人通りも少なく、せっかくの「アートのまち」の雰囲気もない。また、アートクラフト全体の規模が大きいことと、たくさんの来場者がいてなかなか全ての作家の作品を見きれないと言う声もあったこともあり、土澤アートクラフト関係者や有志7名による共同経営で「アートのまち」の拠点を作ることとなったとのこと。「芸術家やクラフト作家の作品が買える店」として、2018年6月に「クラフトアートいちびっと」はできた。
「せっかくアートのまちとして知られつつあるので、この店から商店街全体の流れを変えたいんですよ」と話すのは店長の江越さな子さん。アートクラフトフェア出展者を含め、現在この店には様々なジャンル約50組の作家の作品が委託販売されている。また片隅にはテーブルが置かれ、クラフトワークショップや音楽ライブなどが行われている。昨年には馬頭琴とホーミーのライブが人気だったらしい。コンクリート造りのこっぽら土澤なので音も良く響き、音響設備の必要はないとのこと。「これからもレンタルスペースとしていろんなことに利用して欲しいと思ってます」と江越さんは言う。
展示を見、購入するだけではなく、自らも制作を体験できる「アートのまち」の新拠点は、まち全体に新しい風を吹かせることが期待されている。
店長 江越さな子さんと土澤アートクラフト事務局 武政美紀子さん