まきまき花巻味わいたい南部鬼ぐるみ本舗 喜平堂
南部鬼ぐるみ本舗 喜平堂
29 まき
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くるみのお菓子が花巻に多いと知ったのは、移住して間もないころでした。その時にハマっていたのは、「くるみゆべし」。食感は求肥と似ています。あまりに美味しくて、一箱ひとりで食べきってしまったこともありました。 

何気なくスーパーの生菓子コーナーを見てみても、お茶餅やくるみだれ餅、雁月、きりせんしょなど、くるみスイーツが沢山並んでいます(^ ^)!!埼玉出身の私は不思議に思っていましたが、花巻の人たちにはごく当たり前のことだそうです。

そんな風にしてくるみの魅力に日々とりつかれていったわけですが、「くるみのお菓子の美味しい店を紹介して」と関東から遊びに来てくれた友達や家族に言われたら、迷わず教えたいところがあります。

花巻市石鳥谷町の商店街にある、「南部鬼ぐるみ本舗 喜平堂」さんです。

創業は明治23年。今年から数えると133年前です。温かみのある、それでいてどこか個性的な建物。長い長い歴史をずっとこの場所で見てきたのだと思うと心にじんとくるものがあります。ショーウィンドウの下の方をみてください!くるみが敷き詰められているんです(^^)

現在このお店を営んでいらっしゃるのは、3代目の畠山泰彦さんと奥様のひろ美さん。

こんにちは、いらっしゃいと暖簾をくぐって出てきてくれた店主の畠山さん。優しい笑顔で一気に緊張がほぐれます。店内にはたくさんの賞状が飾られ、愛されてきたお店なのだということがすぐにわかりました。

手書きのお品書きもとても味があって素敵。そしてこの紙の焼け方はかなり昔に書かれたものとうかがえますよ(゚∀゚)!これを見ただけで期待がふくらんできます。

 

このお店の看板商品は、何と言っても畠山さん発案の「鬼ぐるみ」。

写真は割った状態で、商品としては本物のくるみと同じようにくっついています。最中は、もち米の最高品種といわれている「ヒメノモチ」を使用。店舗で手作りすることにこだわっているだけあって、パリっとした食感に香ばしさが加わって、最中部分だけでもおいしいです。中の餡子も、つぶあんでもこしあんでもない独特の食感になるようにこしらえてあります。くるみは地元産と中国産を使っています。アメリカのくるみもよく市場に多く出回っているけれど、鬼ぐるみに使われているくるみとは、味も食感もだいぶ違いますね。商品名にもなっている鬼ぐるみは、殻がとても硬く中身も少ないです。取り出す手間も大変。それでもやはり、このお菓子には欠かせない存在なのだといいます。お抹茶と一緒に楽しみたいですね。

そしてこちらは、姫ぐるみ。「鬼ぐるみがあるなら、姫ぐるみもあったらいいんじゃない?」という声をきっかけに作ったのだそうです。私、姫ぐるみって初めて知りました。
秘伝のたれでくるみをくるんでいて、香ばしい最中ともとても相性がよいお菓子です。みたらしかメープルシロップのような味だなぁと思いました。こちらは苦い珈琲と合いそうです。

本物見たことないなと思っていましたら、店内に飾ってあったくるみをみせてくださいました。お菓子とそっくり!!ちなみに姫ぐるみの方が中の食べれる部分が大きいそうです。

このあたりでは、美味しいものを食べた時に
「くるみの味がする」
と言うそうです。

ちょっと不思議ですが、それだけくるみが身近で愛すべき存在ということの現れなのではないかなと思いました。

他にも、食べたことがないような珍しいお菓子が沢山ならんでいます。

こちらの寒氷は、石鳥谷地域の中心部から西に10kmほど入ったところにある「たろし滝」をイメージしたお菓子です。寒天、白砂糖、ハッカを使っているので、清涼感のあるお味。
「たろし」とはつららを意味していて、毎年冬にこの滝が凍るとその直径を測ってその年の年作を占ってきました。確かに…滝が凍った時の外見によく似ています!

そしてそして!!ございました「くるみゆべし」。くるみと醤油を使っていて、あまじょっぱくてくせになるので何個でも食べれちゃいます(注)。

どっしりと重みのある羊羹。羊羹は餡が命とよく聞きますね。畠山さんも、大変な努力を経て美味しい餡が作れるようになったといいます。そして実はこの羊羹、東京の和菓子の名店の社長から「これは羊羹の原点だ!」と絶賛されたことがあるそうなんです。それはぜひ食べてみたい!!とその日に買って帰りました。

口に含むと、黒糖のほんのり渋味のある香りが鼻に抜けるように広がります。舌触りのなめらかな羊羹は、ゆっくりゆっくり口の中で溶けていくように感じました。ブラックコーヒーと合いそうですが、まだまだ沢山ありますので、いろいろな飲みものとの相性を試してみたいです。

 

もっと紹介したいところですが、ぜひ喜平堂さんに行ってみてください。店主の畠山さんがこだわりを紹介してくださいます。お会計は、そろばんで計算なさってました。こういう昔ながらのやり方を貫いていらっしゃる姿勢が本当に素敵です。

 

「くるみは栄養価も高く、元気の素!ぜひくるみの美味しさを味わってみてください。」

店頭にならんでいるお菓子は、すべてお店で手作りしています。ひとつひとつ手間暇を惜しまずに作っていらっしゃるので、時には店頭にないこともありますが、道の駅石鳥谷「酒匠館」、一部の商品を花巻空港の売店でも取り扱っています。日持ちするものも多いので、旅のお土産や手土産、差し入れなどに持っていったら喜ばれると思います。

私が書きました
塩野 夕子

2018年9月、宮沢賢治が好きすぎて埼玉県から移住してきました。
まきまき花巻編集部と市民ライターの二足のわらじで活動しています。
現在は宮沢賢治記念館に勤めながら、大迫町の早池峰と賢治の展示館・2階にある「賢治文庫」も管理しています。アパートで猫とふたり暮らしです。