「どなたもどうかお入りください。決してご遠慮はありません。」
元・地域おこし協力隊の塩野夕子さんが主宰の賢治文庫がこのたび、より利用しやすい場所へ移転しました。
もともとは塩野さんのご自宅の一角を開放していた賢治文庫。宮沢賢治に関する本がたくさん並んでいました。
全国の宮沢賢治ファンが訪れる場所、そしてファンではなくても知るきっかけになる場所でした。
しかし、塩野さん自身、お仕事の都合でどうしても賢治文庫の予約を断らなければいけないことが多々あったことや、予約したくても人のお宅に行くということに遠慮する方もいらっしゃり、「どなたでも」「遠慮なく」使っていただきたいという運営方針を維持することが難しくなってしまいました。
しばらく賢治文庫はお休みしていたところ、ご縁があり早池峰と賢治の展示館の2階の一部屋を貸してもらえることに!
ここなら、開館時間のあいだは自由に出入りすることができます。大迫町ならではの早池峰山にまつわる展示もあり、宮沢賢治ファンなら楽しいこと間違いなし!
移転までの様子を3回、取材させていただきましたのでご紹介します。
管理人の皆さんの思いを知ればもっと賢治文庫を楽しめるはずです。
本棚を作る日
この日は、展示館の部屋を片付けつつ、ぴったりサイズに作ってもらった本棚を組み立てる作業をしました。
協力隊退任後の活動もサポートや情報発信をしていくために、協力隊担当職員の栗澤さんにも手伝ってもらいながら「予想以上にしっかりした作りで組み立てるのが難しいね!」「ここに置いたら取りやすいかな?」などお話ししながら作りました。
早池峰と賢治の展示館の落ち着いた部屋に合う、アンティーク調の本棚ができあがりました。
お日様が差し込む部屋で、ゆったりと読書をする人々の様子が目に浮かびます。
そして塩野さん宅に保管していたたくさんの本たちが、本棚に並べてもらえるのを楽しみにしているようでした。
本をきれいにして並べる日
本棚を作ってからしばらくして、塩野さんから「ほかの管理人と一緒に本を並べるのでぜひ見に来てください♪」と連絡をいただきました。
賢治文庫の管理人は三人。この日は塩野さんと、本と宮沢賢治が大好きな中目智也さんが作業をしていました。
一冊一冊ていねいに筆でほこりを払いながら、思いを語りながら、たくさんの本をどんな方でも読みやすいように並べるお二人。
「この本は、こういうところがお気に入りなんですよ。」
「賢治さんの本を全部読んで、さらに知りたいって方にはこちらの植物の本なんかもおすすめです。」
「宮沢賢治作品に感銘を受けた同人誌もありますよ。」
などなど、宮沢賢治の作品にあまり触れてこなかった私にもわかりやすく教えてくれました。
オープンして初めて、管理人の皆さんが集まる日
管理人の皆さんが仕事の合間を縫って準備した賢治文庫。
ついにオープンの日を迎えました。
初日は管理人全員集合…とはいかず、やっとこさ全員集まれる!という日、改めて取材に伺いました。
塩野さん、中目さん、そして西尾陽子さん。三人が出会ったのはSNS。みんな宮沢賢治ファン、移住者、世代が近いという共通点がありすぐに仲良くなったそうです。
この日は管理人が集合して早池峰と賢治の展示館の館長、浅沼利一郎さんから宮沢賢治と大迫のつながりについて授業をしてもらいました。
りーさん、りーさんと慕われる浅沼さんは宮沢賢治についてたくさんのことを知っていて、教えてくれる存在。
賢治文庫には宮沢賢治ファンでも、そうでなくても、大人も子どもも、読書がしたい人も、語り合いたい人もいろんな人が集まっていろんな楽しみ方をしてほしいということです。
童話「猫の事務所」のモデルといわれる旧稗貫郡役所を復元した展示館。早池峰と賢治にかかわる作品紹介、賢治が常宿としていた旧石川旅館の部屋再現、風の又三郎の舞台といわれる猫山のモリブデン鉱石などを展示しています。引用:花巻観光協会ホームページ
展示館にはこのように様々なものがありますので、本と一緒に楽しむことができます。
管理人の塩野さん、中目さん、西尾さんは常駐ではありませんが、見かけたらぜひ賢治文庫の楽しみ方を尋ねてみてください。
同じ思いをもって運営している三人ですが、楽しみ方は三様でした。
最後に
花巻市には宮沢賢治に関するものがそこかしこにあり、生活に溶け込んでいるなと感じます。
大迫町は早池峰山の麓にある雰囲気のある町です。かつて宿場町として栄えたこともあり、展示館のある通りは特にすてきな古民家が連なっています。
国の指定する過疎地域のため、人どおりは少なく、お店もたくさん開いているわけではありませんが、自然が広がるあたたかい町です。
ぜひ、新花巻駅や花巻空港からも足を伸ばしてみてくださいね。