まきまき花巻会いたい花巻に“花”のある暮らしを提案する!ファーマーズフローリストの移住生活
花巻に“花”のある暮らしを提案する!ファーマーズフローリストの移住生活
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この数年飲食業界で話題の「エディブルフラワー」とは、食べられる花のこと。サラダやスイーツに彩りを添える新たな食材として注目されています。
このエディブルフラワーを農薬不使用で生産と販売を手掛けるのが「Les Racienes(レ・ラシーヌ)」の岡居亜優美さんです。花巻出身の男性との結婚を機に、2015年4月に神奈川県から移り住みました。
地産地消を基本に花を育て、フラワーアレンジメントなど花屋としての仕事もする「ファーマーズフローリスト」の道を進む岡居さんに、3年目となる花巻での生活や仕事について聞いてきました。

花と関わり続けた人生。結婚を機に移り住んだ花巻

岡居さんは神奈川生まれ。祖母と母親は生け花の先生で、叔父は花屋を営んでいるという環境で育ちました。子供の頃から「花屋さんになりたい」と思っていましたが、高校卒業後はジュエリーの専門学校に進学します。

「叔父の花屋では高校生の頃からアルバイトをしていました。昔から花に触れる機会はあって、花は好きだったんですが、なぜかジュエリーの学校に行きました(笑)。完全に花から離れたいと思っていたわけでもなくて、20歳の頃は、花とアクセサリーでウェディングをトータルに手がけるお店を持ちたいと思っていました。」

「専門学校を卒業してからはジュエリー業界に就職し、デザインと販売を担当していたのですが、お花の販売がしたくてしょうがなくなっていました(笑)。お花屋さんはその場でお花を選んで頂き、束ねてすぐにお渡しできるので、ありがとうという反応もダイレクトに返ってきますよね。一度花から離れたことで、毎日それに元気を貰っていたんだと気がつきました。」

「花からは離れられない」と覚悟した岡居さんは転職。東京都内でも有名な花屋で通算17年間勤務し、店長も務めました。結婚を機に花巻に移住した後も、花に関わる仕事がしたいと動き始めます。

ファーマーズフローリストとして独立するきっかけは花巻での出会いから

畑でインタビューに応える岡居さん

岡居さんは結婚前から何度か岩手に遊びにきており、花巻にも顔見知りがいる状態で結婚。移住も抵抗はなかったそうですが、今の仕事は最初から計画していたわけではありませんでした。

「花巻に来てからは職業訓練学校に通って、溶接の資格をとりました。花を生ける器も自分で作れたらいいなと思ったんです。特にウェディング用の場合は、テーブルに合わせサイズに調整できるなど、お客様のご要望にお応えしやすいと考え、今後の仕事に活かそうと思いました。」

職業訓練学校を卒業した岡居さんは、たまたま起業について学ぶ機会があり、そこからファーマーズフローリストとしての道につながりました。

「東京で花屋として働いていた時から、(花の)産地の大変さというのは分かっていたので、栽培をやろうとは思っていませんでした。でも機会があって花の栽培や事業化について考えていたら、ひとりでも小規模ならやってやれないことはないだろうと考えが変わりました。」

もうひとつ、独立を後押ししてくれたのは、同居するおばあちゃんの存在がありました。以前、野菜や花を売っていたことがあり、産直での販売を指南するだけでなく、農薬を使わずに花を育てたいという岡居さんにとっては心強い味方です。

「花屋で仕事をしていた時のことです。ウェディングケーキに飾りたいと花を買いに来られたお客様がいたのですが、観賞用の花はより綺麗な状態のものを沢山育てるために、多めの農薬を使う必要もあるので、なるべくケーキにはつかないように飾ってくださいと念押ししたことがありました。万が一お子さんがそれを口にしたらと思うと心配で。でも、エディブルフラワーならブーケはもちろん、ケーキにも安心して使えます。そういったこともあって、エディブルというジャンルに興味を持ちました。それと同時に鑑賞用生花も農薬を使わず生産しています。」

「私の師匠であるおばあちゃんからは、便利なものがなかった時代の昔の育て方を教わり、今となってはそれが土にも植物にも他の生物にも環境にもいい事なのかもなと日々学ばせて頂いています。身近に師匠がいるというのは大きいですね。」

花巻はマルシェイベントが豊富!自分の力を試すには絶好の機会がたくさんある

マルシェに出店した時の様子

「花の最盛期は主に産直に出して販売していますが、咲いていない時期はリースづくりやお正月飾りの教室を開いたり、ハーブや花を使ったリースやアクセサリーのイベント販売に出かけたりもしています。」

「花巻市内外では、数多くのマルシェイベントが開催されているので、出店もしやすいです。何か始めたいと思った時に、いきなりお店をもつのはハードルが高いと思うのですが、第一段階としてマルシェに出店してみるのは、お客様の声も聞けて何を求めていらっしゃるのか、すごく勉強になるので今後の生産にもすごく役立ちます。」

ほかにも岡居さんは、花巻市が企画している「食の創り手の現場PR&マッチングプロジェクト」(以下「食の創り手プロジェクト」という。)や「花巻農業女子プロジェクト」にも参加。前者は、生産者と首都圏の食関連事業者の交流やPRを促進することを目的にしており、後者は、農業に従事する女性をつなぎ、商品開発や販路開拓など、他の産業とのマッチングを図るために企画されています。

▲農業女子プロジェクトのミーティング

「食の創り手プロジェクトがご縁でつながった首都圏の飲食店様に、エディブルフラワーを卸しています。今は生産量よりも営業が先行している形ですが、足元にも需要があることが分かったので、畑の規模も拡大することにしました。」

心の余裕がもたらした目標実現へのエネルギー

岡居さんが移住して2年半が経過。生活の面でも変化がありました。

「都会で生活していた時は夜中の12時に夕飯を食べたり、帰宅が朝方になったりすることもありました。今は産直に出荷する時期は朝の5時に起きては花を束ねていますし、夕食は18時半に家族みんなで食べます。がらりと変わりましたね。」

実は岡居さんは、移り住むまでは店を開きたいという夢は半ば忘れかけていたそうです。花巻に来てから生活にも時間にもゆとりができ、人との縁に恵まれて、夢の実現にむかっています。

「今は“花農家カフェ”をオープンさせたいと思っています。ウェディングのジュエリーや花も手掛けつつ、プロのカメラマンによるフォトウェディングや家族写真にも対応したいです。カフェではエディブルフラワーを使ったメニューを提供し、併設された花畑を眺めてくつろいでもらいたい。好きな花を摘んで、花束にしてお持ち帰り頂けるお店にしたいです。」

「アンティーク雑貨も好きで買い集めているので買えないものはないくらい、空間全部で“ほしい”と思ってもらえる雰囲気を演出したいですね。今いろいろな方にお声をかけて、店舗物件を探しているところです。」

夢の実現に向けて着実に前に進む岡居さんに、移住した経験を踏まえて、これから縁あって花巻に移り住む予定の方にこんなメッセージをいただきました。

花屋で話す岡居さん

「花巻は困っている時に本当に助けてくれる人が多いまちです。今、知らない人どうしならあまり干渉しないという人づきあいが多い中、花巻は困ったことがあると、差し伸べられる手が本当に多い。自分で解決できなくても、詳しそうな知り合いを呼んで来てくれるなど、花巻に来てから2年半でここまでこれたのは、奇跡です。皆さんの“たくさんの手”があったおかげです。そしてこれからは私も皆さんのように困っている方に手を指し述べられる人になりたいです!!それには時間に余裕をもって生活しないとですね(笑)。」

岡居さんはこれまでの人生で何度か岐路にたちましたが、そのたびに「花」に引き寄せられ、導かれてきた気がすると話していました。移住した「花巻」はその名のとおり、岡居さんにはうってつけの場所だったのかもしれません。

私が書きました
岩手移住計画

岩手移住計画は、岩手にUターン・Iターンした人たちの暮らしをもっと楽しくするお手伝いをし、定住につなげていくために活動している任意団体です。県内各地で、「岩手移住(IJU)者交流会」と題したイベントを開催しているほか、岩手県などが主催するUIターンイベントにメンバーが参加し、移住希望者の相談にも対応しています。首都圏と岩手をつなぐ活動にも力を入れています。