まきまき花巻体験したい若い力で味噌を返せば、あなたももう「東和町民」
若い力で味噌を返せば、あなたももう「東和町民」
47 まき
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東和の棚田は、今どうなっていますか?3年前に私が出会った時のように、美しい緑に輝いていますか?

中々東和に帰ることのできない中、私がそう声をあげると、私の心の家族のみんなは、たくさんのお便りで東和の「今」を伝えてくれる。

幼穂(成長期の苗)が伸び始め、一面の緑は田植えのすぐ後よりもさらに深みを増している。開花も間もなく、と言わんばかりだ。

そう、住んでいるところは離れていても、心はちっとも離れさせない。私は、「心の東和町民」なのだ。


そして、この季節になると思い出す。冬に仕込んだ味噌の、天地返しの季節。
2年前、夕べに仕事が終わるや否や釜石線直通の東北本線に飛び乗り、「農泊徳さん」で一泊してから朝5時に工房へ駆けつけたこと。全身を使って味噌をかき回して、筋肉痛になったこと。でも大変だった分、終わった後のこびりが美味しかったこと。全てが懐かしい―。

あんずジュースパーティー

今年も、たかすどうのお母さん方は、朝早くに工房へ駆けつけ、いくつもの大樽に入った味噌を手作業で返しているのだろうか。
きっと、あの逞しいお母さん方なら大丈夫。慣れた手つきで、お昼までにはきっと作業を上げるだろう。
でも、年々酷暑となる中、あれだけの味噌樽の中身をひっくり返すのは、さすがに大変ではなかろうか。本来であれば、また私が手伝いに行きたいところだけど…

心配ご無用。そんなお母さん方に、心強い助っ人がやってきた。
東和に魅せられた私の大先輩、役重さんのゼミ生はじめ、地域の活性化をテーマに勉学に励む「ショウタ」「リン」「コウキ」の若くて闊達な大学生三人組だ。

普段は勉学はもちろん、アルバイトやボランティア、合間にさんさ踊りに参加したりブレイクダンスで弾けたりと、あちらこちらで大活躍の屈強な学生3名。

役重先生も、愛弟子たちを叱咤激励しに来場。味噌の天地返しは初めてという彼らに、どんな仕事が待ち受けているのだろうか。

 

味噌保管小屋から、次々と樽が運び込まれ、順に中の味噌の上下を入れ替えてよく混ぜていく。大変な力作業だが、こうすることで味噌に空気が送り込まれて熟成が進み、色・香り・品質が均一になる。

なぜ盛夏にこの作業なのか。味噌の中心温度が25度くらいになるのが、夏の土用の時期。冬から春に仕込まれた味噌は、ここから麹が力価を増して熟成に向かっていく。

この時、味噌が攪拌されることで、均一な熟成が促されるのだ。

 

とは言え、大きな樽に詰められた味噌は約50㎏。これを別樽に上半分移してよくかき混ぜ、元樽に残る半分の味噌も良くかき混ぜ、それを別樽の上に移してまたかき混ぜ―。

上部を平らに均して、乾いた晒布でみそ表面を隙間なく覆い、中蓋をして重石を乗せ、また保管小屋へ戻していく。

それぞれの樽には、製造年月日と原材料を明記した紙が貼られているので、これも間違わずに貼り換える。玄米麹味噌の樽に黒豆味噌の蓋がセットされていたら大変だ。

オーダーメイドの個人預りはさらに慎重を期す。稗麹や玄米麹に天日塩使用など、こだわりがそれぞれあるので、間違いは許されない。

 

そんなたかすどうの母ちゃん達の強い責任感を、この若者達もしっかりと受け止めている。

若者応援に期待していた母ちゃんたちは、それぞれの作業工程に抜かりなく3人を配置。彼等は仕事の飲み込みが早くて要領も良いので、いつになく仕事がはかどる。作業が進むと全員汗ダクダク、床が跳ねた味噌や洗い水でツルッと滑る。母ちゃんたちは樽に掴って何とか堪えるが、体幹が鍛えられた若者たちは踊るようにしてセーフ!

「家の孫より頼りになるじぇ!」と思わず拍手が沸く場面もあった。

おかげさまで、母ちゃん達は大助かり。今まで朝5時に始め昼過ぎまでかかっていた作業が、11時過ぎにはひと段落してしまった。

「コロナ禍でイベントもなく、樽数が例年の二割減とは言え、こんなに楽に終わった年は初めてだ~!来年も頼むー!!」と、若者達の活躍に大絶賛の嵐だ。

 

そんな彼らに用意されたご褒美は、もちろんこびりのおもてなし。

持ち寄りのトウモロコシやメロンや胡瓜漬け、自家製梅ジュースや紫蘇ジュース、そして役重先生からのアイスやお菓子と盛りだくさん。目いっぱいの力仕事を終えたばかりの若者にとっては、これ以上ない栄養補給だ。

これだけではなく、近くの中華料理屋のランチ(食べ放題)でも、「なんぼでも食えよ。」の掛け声に見事な食いっぷりで応えた。

 

この頼もしい若者達の背中を、母ちゃん達は感謝の思いとともに見送った。

来年もまた、今日の日のこの体験のことを思い出してくれますように。大学を卒業しても、東和を、岩手のことを忘れず、立派な地域の担い手となってくれますようにと、願いを込めながら。

真夏の東和に現れた、きらりと光る有望な若者達。彼らのことを、東和の母ちゃん達が見逃すわけがない。きっと、一緒に紫蘇ジュースを飲みながら、こんな言葉をかけたのではないだろうか。

 

「あなたはもう、東和町民でしょ?」

 

そう、3年前、私を引き込んだときと同じように。

 

 

 

私が書きました
まっちー

神奈川県横浜市出身、26歳。2年間の期限付きで、2018年4月から2020年3月まで岩手県に出向。現在は東京在住。ご縁あって花巻市、中でも東和町の大ファンに。