花巻人形絵付け体験・後編は、花巻市博物館で開催された模様をお伝えします。
宮沢賢治童話村に隣接する花巻市博物館。花巻地方の歴史や文化になどに関する、多くの貴重な展示があります。観光でいらした方にもぜひ立ち寄っていただきたいところです。
2019年2月16日から5月6日まで、企画展「花巻人形展―菊池コレクションを中心に」が開催され、花巻市出身の元教員、菊池正樹さんが博物館に寄贈したコレクションを中心に、500種3,000体以上の花巻人形が展示されています。江戸時代後期に創られ、庶民を中心に愛されてきた花巻人形は、内裏雛だけでなく生活や文化、親しみのある物語などを題材に多くの種類が作られてきました。
▲蛸担ぎ童子
花巻の名に相応しい梅や桜などの花模様、赤、緑、群青などの色鮮やかな配色。気品の中にも素朴さがあり、その表情は語り掛けてくるような雰囲気に満ちています。
花巻市博物館での絵付け体験は、平賀工芸社の平賀恵美子さんにより10年以上前から行われています。私が伺った3月24日の朝の天気は雪。足元の悪い中、沢山の方が絵付け教室にいらっしゃいました。
参加者の方の中には、始めた当初から絵付け教室に参加されているという方もいました。震災で絵付けした子年の花巻人形が割れてしまったと話す女性は、また来年参加して新しく絵付けをしたいと語っていました。毎年恒例ということもあり、絵付け教室はとても人気があるそうです。
今回の絵付け対象は、酉(とり)、戌(いぬ)、亥(いのしし)があり、それぞれ型ちがいもいくつか用意されました。
わたしも前回と同様絵付けに参加し、今回は小さな戌の人形を選びました。ちょうどウリ坊の人形と並ぶと同じくらいの大きさで、仔犬のようでとても可愛いです。お隣りで絵付けをされた方も同じ人形を絵付けされていましたが、お互いお手本どおりには作らず、個性が光る一品に仕上げました。並べると、まるで兄弟のようで愛着がわきます。
他の方の絵付けをのぞいてみますと、びっくりするような配色とデザインです。茶色でも黒でもなく、真っ赤なウリ坊、本当は座った姿の戌なのですが、全体を真っ黒に塗って猫にするなど。とても自由な感性で、講師の平賀先生も驚いていました。黒い猫を絵付けした女性は大の猫好きだそうです。
最後にまわりの方たちを誘って記念撮影をしました。自分の作品はわが子のようです。
博物館のホールでは、一度途絶えてしまった花巻人形を復活させた、平賀恵美子さんの義理のお父様である、生前の孫左衛門さんとご主人の章一さんが映っている映像が流れていました。優しいまなざしの方だったのだなと、心が温かくなると同時に涙が出そうになりました。4か月前、花巻人形を初めて目にしてから、人形の絵付けはご本人の人柄があらわれるものだなと感じています。
花巻人形が創り出された江戸時代後期から、多くの時が流れ、人々の暮らしも大きく変わりました。だからこそ、今を生きる方たちが創り出す花巻人形は、歴史の中での貴重な存在として残っていくのではないでしょうか。伝統工芸として価値が見直されることも、もちろん大切なことですが、「こんな風だったらいいな」という自由な発想が生み出す作品も、価値があるのではないかと私は思いました。
今年の7月にも、花巻市博物館で花巻人形の絵付け体験が行われます。今回は大人の方がほとんどでしたが、夏に開催される教室には、毎年子どもたちも多く参加されるそうです。次回はどんな人形が登場するのでしょうか。
〈参照〉
まきまき花巻掲載記事
「花巻人形絵付け体験・前編㏌大迫」:https://makimaki-hanamaki.com/3266
「花巻人形のユニークな魅力」:https://makimaki-hanamaki.com/2693