花巻市東部、かつては南部藩の南の守りのひとつであった土沢城があった城下町で、かつ花巻から釜石への釜石街道沿いの宿場町でもあった東和町土沢は、今でも独特の文化と気風を持つまち。城跡である館山公園下の商店街には昔ながらの店や懐かしいものがまだまだたくさん残っている。
例えばこの赤い郵便ポスト。モニュメントではなく、今も当たり前のように現役で使われている。
米穀商であるくはど商店も老舗、「くはど」とは屋号であろう。
生活用品・雑貨の店では熊や鹿、猪よけの爆竹が普通に売られている。
このまちでは椎茸もキノコではなくホダ木ごと売られているようだ。それにしても安い。商店街の中には「きのこやおいよ」というキノコ専門店もあり、首都圏などにも出荷しているとのこと。「きのこや」という商売が成り立っているのも珍しいことだ。ぶらりとまちを歩いてみるだけでも面白いものが見つかるまち。
そんなまち歩きの最中、お腹が空いたらここの名物を食したい。ここも創業70年になろうという老舗松葉商店のしょうゆたこ焼きだ。
三代目の松葉孝博さんは、先代、先々代にも増して素材や味にこだわってきた。南部小麦と出汁による生地と地元のキャベツ、三陸産のタコと、すべて岩手県産のもの。この店ならではのしょうゆも土沢商店街にある名店佐々長醸造のものを使っている。「最後の晩餐に食べたいと思ってもらえるたこ焼きを」という目標がこだわりの味を生み出す。ジャズギタリストとしても、わんこそば全国大会行事としても活躍中の松葉さん。土沢商店街振興なども含め、地域のことを常に考えている温かさがたこ焼きの味にも現れている。
松葉商店のたこ焼き、テイクアウトでももちろん美味しいのだが、できれば店内で熱々のものを食べてみて欲しい。
好みによって自分で刷毛で塗るしょうゆの旨みを存分に味わえる。ソースでも、マヨネーズでもない、まさにここだけの味だ。
なお店内の食堂にあるのははたこ焼きだけではない。蕎麦やうどん、ラーメンなどのメニューも豊富だ。
この日はチャーシューメンを食べたが、脂身をすっかり取り去ったあっさりチャーシューでとてもヘルシー。とはいえしっかりとボリュームもある。
しょうゆ味はまさしく佐々長醸造の味。たこ焼きにも通じる独特のコクがある。チャーシューメンとたこ焼きで大満足。
松葉商店の店は花巻や盛岡、北上、金ヶ崎などにもあるが、土沢ならではの味が松葉商店にはある。