まきまき花巻見たい鮮やかなつるし雛の世界
鮮やかなつるし雛の世界
28 まき
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 2月の半ばから、あちらこちらで雛祭りにちなんだ催しが開かれています。石鳥谷の八日市いきいき交流館(八日市振興センター)で行われている、「つるし雛まつり」もそのひとつです。14年前から始まったこの催し。今では会場いっぱいにつるし雛が飾られていますが、始めた当初は10点ほどだったといいます。

▲14年前に作られた初代つるし雛

 つるし雛の起源は江戸時代と言われていて、古くは伊豆地方の風習「つるし飾り」のことです。雛人形が高価であったため、庶民の代理品であったといいます。女の子の初節句に、めんこい孫の為におばあちゃんが身の回りのあまり布を使ってこしらえたという話です。現在では、雛人形の左右につるして賑やかに飾られることもあります。

 

 

 

 つるし雛は、子どもの健やかな成長を願いひとつひとつミシンを使わずに、すべて手縫いで作られています。

 ひとつひとつの作品には、全て作られた理由があります。直径40㎝ぐらいの紅白の輪に7本の赤い糸がつるされ、その一本一本に7個の人形、全部で49個の人形が飾り付けられています。なぜ49個かというと、一説には男性の人生はわずか50年、女性は一歩下がって49年と言われていたということがあげられます。そして何といっても見ごたえのある飾りの種類。主に、衣・食・住に困らないようにという願いがこめられているのですが、100種類以上あると言われています。

 今回は、その中からいくつかご紹介します。

 

 

・金目鯛…めでたいの鯛。赤い色には魔よけの意味があります。

・うさぎ…赤い目のうさぎは病気を退治する力があると信じられていました。

・猿…さる(去る)にかけて厄払い。災いが去るという意味があります。

・桜…みんなを楽しませる。桜の葉の甘い香りは、美しく優しい心を育むとされています。

・鶴…鶴は千年長生きすると伝えられ、長寿や健康への祈りが込められています。

 

 

▲鯛かざり

▲鶴と花

 

 見どころはまだまだあります。飾りは身の回りの古い着物の生地で作られているため、同じ飾りでも1点ごとに柄が違い、ユニークです。すべて手作りであるからこその魅力が光ります。中には、花と鶴だけや、桜だけといったつるし飾りもありました。

 

 

「この催しが始まった頃から、毎年見に来ています。」と語る女性は、ご自身もつるし雛を製作されていて、花巻地区のまなび学園にも展示をされているそうです。「毎年訪れる度に数が増えていき、とても見ごたえがあって面白いです。これは初めて見ます。」などと、同じ作り手として目を輝かせていました。

 

 

 

 

▲代表の高橋多美さん

「女の子の幸せを祈って、ひとつひとつ気持ちを込めて作るのよ。」と、代表の高橋多美さんは語ります。家族だけではなく、親しくされている方が皆さんで協力して作り上げることも多いようです。会場の飾りつけをどのようにしていくかも、高橋さん発案によるもので、つるし雛をより美しく見せるために様々な工夫をこらしていました。

 

 背景に打掛を飾ったり、陶器のランプシェードを置いたり、その年の干支の人形を並べたり、他にも見ている方が楽しめるようにという気持ちが伝わってくる展示が沢山あります。

 

会場には、お孫さんやお子さん連れの方も多くいらっしゃり、小さなお子様もとても楽しそうに見入っていました。

 

 以前まきまき花巻の記事でもあげさせていただいた「花巻人形」も展示がされていました。つるし雛と同じく江戸時代に庶民に寄り添う形で作られたものなので、近いイメージを感じます。土人形ならではの素朴な雰囲気が親しみやすく、つるし雛と一緒に飾られ、より一層魅力的に見えました。つるし雛は、主役としてもわき役としても魅力的です。

 

 

▲両脇がインターンシップの学生。中央が代表の高橋多美さん。

 今回の取材は、インターンシップで花巻市にいらした東北公益文化大学の3年生お2人に、取材に同行していただきました。彼らもわたし同様、つるし雛を見るのは初めての経験でした。若い男性が見学に来ることはやはり珍しいようで、どんな反応をするのかと思っていました。2人には、「展示の部屋に入った瞬間、異世界に来たようだった」、「同じ形のものも、作り手によって個性があっておもしろい」など、純粋に驚きと感動があったようです。自由に撮った写真も、新鮮な世界に引き込まれていた魅力が伝わってきました。代表の高橋さんも、とても嬉しそうに色々な事を教えてくださいました。それを受け止め、最後には「つるし雛の素晴らしさを、もっと多くの世代の方に知ってほしいと思った」という言葉を聞くことができました。

 今回の取材をきっかけに、新しいことへの興味を持つことの重要性を学び、自身の世界を広げることができたのではないかと感じました。

 

 つるし雛に込められた想いは、男の子に対してもまた同じです。五月人形の両脇に飾られているのは、男の子の健やかな成長を願ったつるし雛でした。金太郎や米俵、太鼓など、力強く元気に育ってほしいという印象をうけました。

 

 この素晴らしい「つるし雛」という宝物は、これからも多くの方に知っていただき、作り続けていく価値のあるものだと、実際に見て深く感じました。

 

 

 今回訪れた、石鳥谷の八日市いきいき交流館では、3月3日(日)まで、「つるし雛まつり」が開催されています。

興味のある方は訪れてみて、じっくりとご覧になってみてはいかがでしょうか。

 

 

 

〈参考〉

・八日市いきいき交流館配布チラシ(弓岡勝美氏の文献より)

・HP「つるし雛大百科」http://www.tsurushi.jp/index.html

〈まきまき花巻掲載記事〉

花巻人形のユニークな魅力 https://makimaki-hanamaki.com/2693

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

私が書きました
塩野 夕子

2018年9月、宮沢賢治が好きすぎて埼玉県から移住してきました。
まきまき花巻編集部と市民ライターの二足のわらじで活動しています。
現在は宮沢賢治記念館に勤めながら、大迫町の早池峰と賢治の展示館・2階にある「賢治文庫」も管理しています。