まきまき花巻体験したい地域の産土(うぶすな)で初詣
地域の産土(うぶすな)で初詣
78 まき
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当地では初詣のことを「元朝参り(がんちょうまいり)」と言う。読んで字の如し、「元日の朝お参りに行く」ことだ。もちろん他地域のように日付が変わった夜中にお参りに行く人も多いのだが、元旦に行われる行事を楽しみに地域の古社にお参りする人も多い

 例えば1自治体のような大きな町の中心となる昔ながらの大きな神社は鎮守と呼ばれるが、集落や行政区単位の小さなコミュニティーの中心となる神社は産土(うぶすな)と呼ばれる。産土さんでは地域ごとに昔からの慣習や伝統に基づく行事がいろいろあり、元旦行事もそのひとつ。

 東北自動車道花巻南インターチェンジそば、花巻市の西部に位置する上根子熊野神社は、古の街道の拠点として奈良時代の出土品も多数出ている歴史ある神社で、坂上田村麻呂が勧進(かんじん)したといういわれを持つ古社。神社が出来る前から信仰の場所だったらしく、周辺には古墳も多数あったという(現在も復元されて境内に数基残っている)。ここの元旦行事は、朝6時からの元旦祭から始まる。

 この熊野神社を産土としている各地域の区長さんたち、農家組合、消防団の方々などがまだ暗いうちに神社に集まり、元旦祭でご祈祷を受ける。1時間ほどの間、極寒に耐えながら気持ちを新たにするお祀りが終わった後、7時からは餅まき。この時まかれる餅は、地域の子ども会などが中心となって育てた神田のもち米から作られているが、この餅まきを楽しみに周辺からたくさんの住民が集まってくる。

 餅まきが終わった頃、上ってくる初日の出を拝みつつ、8時過ぎから、この神社を拠点とする上根子神楽による神楽奉納。餅まきから残っている方々、神楽を見るために遠くからもやってくる方々、ゆっくり元朝参りに来られた方々などが、神楽殿前に前夜から焚かれた焚き火を前に神楽奉納を鑑賞していく。

 年に20回以上の出番がある上根子神楽だが、保存会メンバーが一番人数集まれるこの時がたくさんの演目を奉納できる。式六番といわれる「鳥舞」「千歳・翁舞」「三番叟(さんばそう)」「山の神舞」「八幡舞」「岩戸開き」のほか、メンバーの集まり具合によっては「鐘巻(かねまき)」「天王舞」「三韓の舞」などが演じられる。

 神楽殿での神楽奉納が終わると、最後は拝殿(はいでん)に上がっての権現舞(ごんげんまい)。権現舞は権現頭をご神体として舞われる、神楽演目の中では特に神聖なものだ。

 ここまで終わると、もう日は高くお昼近い。この地域の新年はこうやって始まる。

 餅まきや神楽鑑賞、お参りはこの地域の方じゃなくてももちろん大丈夫。ゆっくり元旦を過ごすのも良いが、たまには早起きして、神聖な雰囲気の中で新年を迎えてみるのも良い。

私が書きました
北山 公路

出版プロデュース、企画・編集のフリーランス。
花巻に生まれ育ち、今も花巻在住。東京の出版社の仕事と地元の仕事半々を花巻でこなす。2017年春から「花巻まち散歩マガジン Machicoco」を創刊し、隔月発行継続中。