戦争報道カメラマンといえば、思い浮かぶのがロバート・キャパ、その人。
キャパはスペイン動乱、それに続く第二次世界大戦におけるヨーロッパ戦線をカメラで密着取材。優秀作品として、数々の賞を受賞した。
同じ頃、日本陸軍の従軍報道兵として出征。日中戦争を写真記録として取材しその写真作品は戦後、権威ある世界的写真賞の栄誉に。
白と黒の深淵から浮かび上がる独特の構図作風ゆえ、光の詩人と呼ばれた内村晧一(1914~1993年)という人物が、花巻には居たのである。
紹介する写真は昭和16~19年にかけ中国で撮影された流浪者(写真②)と、肉を売る女(写真③)。そして、アジア太平洋戦争を生き抜き戦後復員し、故郷、花巻の地で印刷業を営みながら撮り続けた、夜の母と少年(写真④)潮の音・八戸・蕪島(写真①)と題する4点。
戦前と戦後とは、時の流れが戦争と平和に隔絶されているとはいえ、内村の精神には戦火の中で撮影された代表作「平和の鐘」に籠められた、平和文化への限りなき憧憬と真逆対極に位置する戦争への絶対的嫌悪。この二心が低音奏譜で流れている。
それは取りも直さず、新渡戸稲造(先祖が220年に渡り花巻在住)宮澤賢治、斎藤宗次朗(絶対平和論の思想家・内村鑑三の一番弟子と称された人物)等に共通する、岩手・花巻固有の文化土壌から生まれたものかも知れない。